九四式装甲列車

九四式装甲列車

九四式装甲列車（きゅうよんしきそうこうれっしゃ）は、大日本帝国陸軍によって運用された装甲列車です。1934年に完成したこの列車は、1933年の臨時装甲列車の教訓を踏まえ、特に重量に起因する走行性能の向上が求められました。開発にあたっては南満州鉄道株式会社が製作に関与しました。

概要

この装甲列車は、満州事変が進行する中で、その整備が急務となり、臨時装甲列車として編成されることが決まりました。昭和8年（1933年）に開発が始まり、翌年に正式に完成しました。列車の編成は次のようになります：

• - 電源車
• - 炭水車
• - 機関車
• - 指揮車
• - 火砲車（丙）
• - 火砲車（乙）
• - 火砲車（甲）
• - 警戒車

この編成では、火砲車が機関車の前方に配置されており、火力を正面に集中させることができる設計となっています。また、走行中にも発射が可能な構造が求められていました。設計においては、歩兵用の車両は廃止され、電源車が連結される形で通信能力や各車両間の連絡も改良されています。計画当初、列車の速度は平地で60km/h、炭水の補給なしで150kmの行動距離を目指していました。

兵装

九四式装甲列車の各車両には下記のような兵装が配備されていました：
1. 警戒車 - 重機関銃が2挺装備され、前方への射界が広い。
2. 火砲車甲 - 10cmの高射砲1門と重機関銃2挺。全周射界を持ち、砲は200発の弾薬を搭載。
3. 火砲車乙 - 火砲車甲と同様の装備ですが、全高がわずかに異なる。
4. 火砲車丙 - 7.5cmの高射砲2門を搭載。砲は全周射界を持ち、300発の弾薬を搭載。
5. 指揮車 - 重機関銃2挺を備え、射界が全周に広がっている。
6. 補助炭水車 - 重機関銃2挺装備、側方への射界あり。
7. 電源車 - 重機関銃2挺を装備。

弾薬の配分は、重砲車に対しては尖鋭弾と榴弾がそれぞれの割合で搭載され、特に高射砲には高射用弾薬が用意されました。指揮車には、30センチの探照灯と観測具が設置され、無線通信も整備されていました。

各車両の構造と要目

九四式装甲列車の各車両には、視認性の向上や射撃指揮を実現するための独自の観測 機器が裝備されています。特に指揮車には射撃の統一指揮に必要な各種観測設備が整えられ、火砲車には個別に戦闘を行うための観測機材が装備されているのが特徴です。各車両間には通信のための直通回線が設けられ、戦闘指揮が円滑に行えるようになっています。無線機は500kmの通信が可能で、近距離無線も備えられていたため、迅速な情報伝達が実現されました。

装甲は側面主要部が10mm、その他が6mmの厚さを持ち、各車両の重機関銃は車両内部に格納することが可能です。また、特殊な探照灯や測距儀も装備されており、隙間のない戦闘準備が整えられています。

この装甲列車は、その技術力や戦略的な設計が評価され、帝国陸軍において重要な役割を果たしました。

もう一度検索