九四式飛三号無線機

九四式飛三号無線機の概要

九四式飛三号無線機（きゅうよんしきひさんごうむせんき）は、大日本帝国陸軍が特に航空機向けに開発した無線通信装置です。この機器は主に戦闘機間の相互通信を目的としており、最大で約15kmの近距離通信に対応しています。使用される電波は、超短波および短波です。加えて、本機は対空用の十号無線機との通話が可能であり、爆撃機や偵察機からの信号を受信することもできる特長があります。全備重量は約30kgで、昭和10年12月には仮制式の上申が行われました。

開発の経緯

九四式飛三号無線機の開発は、昭和2年4月21日の航部発乙第六五号で始まりました。初期の目標として、戦闘機同士の通信距離を5km、戦闘機から対空機への通信距離を10kmに設定しました。その際、重量は30kgを超えないようにし、送受信装置の分離使用を可能にすることが求められました。

昭和3年4月13日には、さらなる要件の修正が行われ、偵察機における対空通信の距離を20km、全体の重量を40kg以内にすることが求められました。この修正に伴い、改飛三号機として第二次試作が行われ、性能向上が図られました。

昭和4年6月には、八八式偵察機や八七式軽爆撃機に搭載して野外試験を行い、通信距離を実測しました。この試験では空対地での通信が5km、飛行機間での通信が3kmという結果が得られました。さらに、長さ5mの垂下空中線を使用すると、空対地で30km、飛行機同士で10kmの通信が可能であることも確認されました。

昭和5年に入ると、無線機器の重要性が再認識され、超短波の研究が並行して進められることになりました。このような背景の中で、改飛三号機の開発が一時中止され、新たに飛行機用超短波機の研究へと舵を切りました。

また、昭和6年には十六号機として新的な研究が開始され、性能が強化されました。これにより、戦闘機同士の通信距離が最大で15kmにも達するような設計が試みられました。

構造と機能

九四式飛三号無線機は、送信装置、受信装置、電源、空中線材料、付属品から構成されています。全体での重量は約30kgです。送信装置には送信機、機上調整盤、陽極電流計などが含まれ、水晶制御によって安定した通信が可能です。受信機は信号を受け取る機能を有し、送信機と同じ周波数範囲で操作されます。

電源は風圧で回転するプロペラによって生成される直流電源であり、高圧と低圧の2種類の電圧を提供します。このシステムにより、飛行中も安定した電力供給が行われます。

空中線材料には絡車があり、内部にワイヤーを巻き込んでいます。これにより、効率的な通信が実現されます。機材は一式まとめて箱に収納できる設計になっており、地上で容易に移動と設置が可能です。

まとめ

九四式飛三号無線機の開発は、日本陸軍の航空機通信技術の重要な進展を示しており、さまざまな試行錯誤を経て完成に至りました。通信距離の拡張や重量の軽減に努めた結果、戦闘機の迅速かつ効率的な通信手段が確立されました。これは実戦においても戦略的な優位性を確保する重要な要素となりました。

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