九鬼隆律

九鬼隆律

九鬼 隆律（くき たかのり）は、江戸時代前期に摂津国三田藩の第3代藩主を務めた人物です。九鬼家としては、その第15代目の当主にあたります。短い生涯ではありましたが、藩主として領地を治め、幕府の公務にも携わりました。

出自

隆律は、因幡国（現在の鳥取県東部）にて生を受けました。父は、因幡鳥取藩の初代藩主であった池田光仲（いけだ みつなか）です。隆律は光仲の三男として誕生しました。池田家は鳥取藩32万石を領する大大名であり、隆律は名門の家柄に生まれたことになります。

九鬼家への養子縁組と家督継承

一方、摂津三田藩（現在の兵庫県三田市周辺）を支配していた九鬼家では、第2代藩主の九鬼隆昌（くき たかまさ）に跡継ぎとなる男子がいませんでした。九鬼家の存続を図るため、隆昌は他家から養子を迎えることを決めました。

寛文9年（1669年）、池田光仲の三男であった隆律が、九鬼隆昌の婿養子として九鬼家に入ることとなりました。隆律は隆昌の娘を正室に迎え、この縁組によって九鬼家の家督を継承し、摂津三田藩の藩主となったのです。この養子縁組は、家名の断絶を防ぐための当時の一般的な慣習であり、有力大名家との繋がりを深める意味合いも持っていたと考えられます。

名前の変遷

九鬼家の当主となった当初、隆律は「隆仲（たかなか）」と名乗っていました。この名前は、養父である九鬼隆昌の名前から一字「隆」を、そして実父である池田光仲の名前から一字「仲」をそれぞれ取ったものとされています。これは、両家の結びつきと、養父・実父双方への敬意を示すものと言えるでしょう。その後、時期は明確ではありませんが、「隆律（たかのり）」と改名しています。

藩主としての活動

摂津三田藩主となった九鬼隆律は、領内の統治にあたる一方、江戸幕府からの重要な公務も担当しました。特筆すべきは、幕府の命令を受けて、畿内地方や西国方面において検地などの調査を実施したことです。

検地は、土地の面積や生産力を正確に把握し、それに基づいた年貢（租税）の徴収を行うための基本的な作業でした。江戸幕府は全国的な土地支配を強化し、幕藩体制を安定させるために、諸大名に検地を命じることがありました。隆律が具体的にどの地域の検地を担当したかの詳細は不明ですが、これは幕府からの信頼を示す任務であり、藩主としての手腕が問われる公務でした。三田藩は小藩ではありましたが、京や大坂に近い地理的重要性から、幕府の政策執行に関わる役割を期待されたのでしょう。

藩内の具体的な施政については、史料が限られており多くを知ることはできません。しかし、彼の治世は30歳での死去により比較的短期間であったため、藩政において大規模な改革などを主導する機会は少なかったのかもしれません。

死去と後継者

九鬼隆律は、貞享3年（1686年）6月6日に亡くなりました。享年30歳という若さでした。病によるものと思われますが、詳しい死因は明らかになっていません。藩主の突然の早世は、藩政に少なからぬ影響を与えたと考えられます。

隆律には嫡男がいなかったため、その死後、家督は養嗣子の九鬼副隆（くき すけたか）が継ぐこととなりました。副隆は、摂津三田藩の初代藩主である九鬼久隆（くき ひさたか）の外孫にあたる人物です。また、隆律の正室（九鬼隆昌の娘）の従弟にあたる関係でした。このように、初代藩主の血筋を引く副隆が後を継いだことで、九鬼家による摂津三田藩の支配は継続され、家名の存続が図られました。

九鬼隆律の生涯は短かったものの、有力大名池田家から九鬼家へ入り、藩主として幕府の重要な公務を務めるなど、江戸時代前期の武士としてその役割を果たした人物と言えます。

もう一度検索