乱妨取り

乱妨取り（らんぼうどり）について

乱妨取りとは、主に中世から近世の日本において、戦闘終了後に兵士が人や物を奪う行為を指します。この行動は一般的に省略されて「乱取り」や「乱捕」とも呼ばれています。乱妨取りは、戦争の混乱に乗じて民間人やその財産を狙うものであり、当時の日本の武士や兵士の士気や倫理観の影響を色濃く反映しています。

乱妨取りの背景

平時における食料供給の問題は、兵士の行動に大きく影響しました。多くの兵士は農民出身であり、彼らの戦争への参加は、しばしば食料の配給や戦地での略奪を目的としたものでした。このような状況の中で、乱妨取りが頻繁に行われたのです。特に、有力な大名である織田信長や豊臣秀吉は、兵農分離政策を推進し、足軽に俸禄を支給することで経済的な報酬を与えていました。彼らは乱妨取りを取り締まるため、厳しい罰則を設けることによって命令を徹底させました。

実際の行例

天正の役

1573年、豊臣秀吉が島津氏との戦いである天正の役を平定した後、彼は島津氏に対して人身売買を根絶するよう促しました。この時、豊後国で拉致されて売られた男女を返還するよう、朱印状を送った事例が有名です。このように、戦闘における倫理の重要さが浮き彫りとなった瞬間とも言えるでしょう。

桶狭間の戦い

織田信長の桶狭間の戦いにおいて、一説には今川軍が民家への乱妨取りを行って油断していたため、織田軍が急襲できたとされています。この説は、黒田日出男によって提唱されました。彼は、様々な史料に基づき、勝因についての新たな見解を示しています。特に『甲陽軍鑑』に記された今川軍の略奪行為が、織田軍の奇襲の成功に寄与したという点に注目されました。

大坂の陣

戦国時代の大規模な戦闘の集大成である大坂夏の陣の後、大坂市内では徳川方の雑兵たちによる乱妨取りが行われました。黒田長政が描かせた「大坂夏の陣図屏風」には、実際にその様子が描かれています。また、真田信繁の娘も乱妨取りの被害に遭ったことが記録されており、戦の影響は戦士たちだけでなく一般市民にも及んでいることが分かります。

結論

乱妨取りは、日本の戦国時代における兵士の行動を理解するうえで重要な側面です。戦闘によって引き起こされる倫理的な問題や社会的な影響は、その時代の武士道や農民の生活に深く関連していました。これらの事例を通じて、乱妨取りが単なる掠奪行為ではなく、当時の社会構造や戦争の影響を考察するための鍵であることが分かります。

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