乳鉢

乳鉢について

乳鉢（にゅうばち）は、固体を粉々にしたり混ぜ合わせたりするために使用される器具で、通常乳棒（にゅうぼう）と一緒に使います。この器具は古代から世界各地で利用されており、食品の加工や薬剤の調製、実験などに広く用いられています。

語源と歴史

乳鉢という言葉の語源は、英語の「mortar」、ドイツ語の「Mörser」、フランス語の「mortier」に由来し、これらはラテン語の「mortarium」が起源です。日本語の「乳鉢」という表現は、1874年に発刊された『小學化學書』に見られ、それ以前は「薬局の臼」や「石臼」といった用語が使われていました。この名称の変遷は、様々なデザインや素材の乳鉢が導入され、粉砕だけでなく混合にも用いられるようになったことが背景にあると考えられています。

「乳」という言葉については、女性の乳房に似ているという俗説や、乳香を加工するための器具との関連が言われていますが、確たる根拠は示されていません。研究者の五位野政彦は、「乳」という呼称は形状からではなく、固体を柔らかくする行為に由来するという仮説を提唱しています。また、乳棒が乳鉢に由来して名付けられたという見解もあります。

実験器具としての乳鉢

化学実験では、試薬や柔らかな試料を粉砕する際に、磁製やガラス製の乳鉢が使用されます。これらの器具の粉砕面は粗く仕上げられ、乳棒で圧搾しながら「こじる」動作をすることで、試料が効率よく粉砕されます。硬い試料を粉砕する場合は、ステンレスやメノウ、アランダム製の乳鉢が利用され、こちらは平滑な面が特徴で、主に試料を打ち付ける方法で粉砕されるため、深い鉢の形状を持つことが多いです。

混合目的で使用する際には、乳鉢を手に持ち、乳棒ではなく乳鉢自身を動かして擂ることで、材料がよく混ざります。

擂潰機との関連

食品加工においては、乳鉢の原理を応用した擂潰機（らいかいき）が利用されます。この機械は摩砕と圧縮によって粉砕や混練を行うもので、臼の中に複数の鉢棒（杵）を差し込み、鉢面との摩擦で原料をすりつぶす仕組みになっています。

参考文献と関連項目

乳鉢の詳細やその利用法については、赤尾剛らの著作『固体・粉体処理』などに記載されています。

関連する器具としては、すり鉢、薬研、研和、臼などが挙げられます。これらは類似した機能を持ちながら、異なる用途や形状を有しています。

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