亀は意外と速く泳ぐ

『亀は意外と速く泳ぐ』は、三木聡監督が2005年に発表したコメディ映画です。上野樹里が主演を務め、日常に退屈した主婦が、ある日突然スパイとして活動することになるという、奇想天外な物語が展開されます。

映画の舞台は、どこにでもありそうな日本の平凡な街。主人公の片倉スズメ（上野樹里）は、海外赴任中の夫からの電話も、ペットの亀の世話についてばかりで、変化のない毎日に少し飽き飽きしていました。そんなある日、スズメは街で見つけた小さな広告ポスターをきっかけに、クギタニ夫妻（岩松了、ふせえり）という男女から、スパイの勧誘を受けます。

クギタニ夫妻は、スズメのような平凡な主婦こそスパイに向いていると主張し、彼女に活動費として大金を渡します。さらに、街の住人たちも実はスパイだったという驚愕の事実が明らかになり、スズメの日常は大きく変わっていきます。スパイとしての訓練は、スズメに新たな刺激を与え、彼女の生活に張り合いをもたらします。しかし、平凡であることを求められるはずのスパイ活動の中で、スズメは海岸で死体を発見したり、幼馴染が行方不明になったり、川でおぼれている少年を助けてテレビで話題になったりと、次第に世間の注目を集めるようになってしまいます。その結果、スズメは公安当局からもマークされるようになり、事態は思わぬ方向へと進んでいきます。

物語は、スパイ訓練の一環として、プロの殺し屋である豆腐屋の主人から銃の扱い方を教わるシーンへと続きます。しかし、その訓練キャンプは、普通のバーベキューパーティーのように平和な雰囲気で始まり、スズメの想像とはかけ離れたものでした。そして、アルバイト主婦スパイとして活動するスズメに、ついに秘密の指令が下されることになります。

この映画の魅力は、何と言っても三木聡監督の独特なユーモアセンスです。不条理な展開や脱力系のギャグが、映画全体を包み込み、観る者を不思議な世界へと引き込みます。また、上野樹里をはじめとする個性的なキャスト陣の演技も、物語をさらに面白くしています。日常と非日常が混ざり合う独特な世界観の中で、スズメがどのようにスパイとして成長していくのか、そして、彼女の平凡な日常がどのように変化していくのか、最後まで目が離せない作品です。

映画のスタッフには、共同脚本に本田久就、音楽に坂口修、撮影に小林元らが名を連ねています。また、劇用亀造型を奥山哲志が担当するなど、細部にまでこだわりが見られます。エンディングテーマには、レミオロメンの「南風」が使用され、映画の世界観をさらに引き立てています。出演者には、蒼井優、岩松了、ふせえりなど、実力派俳優たちが名を連ねており、彼らの個性的な演技が、映画をさらに魅力的なものにしています。映画を彩るロケ地にも注目です。

『亀は意外と速く泳ぐ』は、ただのコメディ映画としてだけでなく、観る人の心に何かを残す、そんな不思議な魅力を持った作品です。ぜひ一度、この独特な世界観を体験してみてください。

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