亀田達也

亀田 達也（かめだ たつや）氏は、日本の著名な心理学者であり、特に実験社会科学、社会心理学、そして行動生態学といった幅広い分野を専門としています。現在、東京大学大学院人文社会系研究科の教授を務めています。

経歴

東京都で生まれた亀田氏は、東京大学文学部社会心理学科で学び、1982年に卒業しました。その後、同大学院に進み、1984年に修士課程を修了しています。さらなる学術的な研鑽のため、アメリカ合衆国のイリノイ大学心理学科に留学し、1989年にPh.D.を取得しました。

帰国後、1989年に東京大学文学部助手としてキャリアを開始しました。その後、東洋大学社会学部の講師（1991年）を経て、1994年からは北海道大学文学部の助教授を務めました。2000年には同大学文学研究科の教授に昇任し、長きにわたり北海道の地で研究と教育に従事しました。特に、2012年からは北海道大学社会科学実験研究センターのセンター長も兼任するなど、大学における社会科学研究の推進に貢献しました。2014年、母校である東京大学に戻り、東京大学大学院人文社会系研究科の教授に就任し、現在に至ります。

国内だけでなく、海外の研究機関との交流も積極的に行っています。1997年から一年間、フルブライト・フェローとしてコロラド大学ボルダー校およびノースウェスタン大学で研究活動を行いました。また、2001年にはマックス・プランク研究所の研究員（DAAD Fellow）としてドイツに滞在し、2008年から翌年にかけては、スタンフォード大学の行動科学高等研究センターにてレジデンシャル・フェローとして先進的な研究に取り組みました。

学術界への貢献も大きく、2014年10月から2020年9月までの期間、日本学術会議第一部の会員を務めました。

研究分野と主要な業績

亀田氏の研究は、人間が社会の中でどのように意思決定を行い、集団として行動するのかという根源的な問いに焦点を当てています。実験室での厳密な実験手法や、行動生態学的な視点を取り入れることで、集団における知性の創出メカニズム、社会規範の発生と進化、協力行動や利他性の起源といったテーマを探求しています。特に、人間が持つ認知的な限界や、環境への適応という観点から、社会的な行動や制度がどのように形成されるかを明らかにしようとしています。

その研究成果は多くの著書として結実しています。単著としては、集団の意思決定プロセスを分析した『合議の知を求めて―グループの意思決定』（1997年）、人間のモラルがどのように発生し機能するのかを実験社会科学の手法で問い直した『モラルの起源　実験社会科学からの問い』（2017年）、そして社会における共感や分配、秩序といった「連帯」の仕組みを実験的に探求した『連帯のための実験社会科学　共感・分配・秩序』（2022年）などがあります。これらの著作は、一般読者から専門家まで、幅広い層に影響を与えています。

また、他の研究者との共同研究も多く、共編著も多数あります。『複雑さに挑む社会心理学』、『進化ゲームとその展開』、海外の研究者との共編著である “Evolution, culture, and the human mind”、日本の文化や実践に光を当てた『文化と実践』、そして認知科学の視点からコミュニケーションにおける共存を扱った『社会のなかの共存』などがあります。さらに、「フロンティア実験社会科学」シリーズの編著として『「社会の決まり」はどのように決まるか』を監修しており、これは実験社会科学の最前線を紹介する重要な著作となっています。

亀田氏の研究は、人間の社会性を科学的に理解するための新たな視点を提供し、社会心理学、行動科学、さらには経済学や進化生物学といった関連分野にも影響を与えています。教育者としても、多くの後進を育成し、日本の心理学、特に実験社会科学分野の発展に寄与しています。

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