二フッ化二窒素

二フッ化二窒素：性質と反応性

二フッ化二[窒素]は、常温で無色の気体である無機化合物です。1952年、アジ化フッ素の熱分解生成物として発見されました。この分子は、フッ素原子2つと窒素原子2つから構成され、シス型とトランス型の2つの幾何異性体が存在します。

異性体の性質

F-N=N-Fという構造を持つ二フッ化二窒素は、窒素原子間の結合を軸として、フッ素原子が同一側にあるシス型と、反対側にあるトランス型が存在します。これらの異性体は熱力学的に相互転換しますが、低温下では分離して精製することが可能です。

トランス型は熱力学的に安定しており、[ガラス]]容器に保存できます。一方、シス型はガラスを侵食する性質を持っており、反応によって[[四フッ化ケイ素]と[亜酸化窒素]を生成します。この反応は、次のように表すことができます。

2N₂F₂ + SiO₂ → SiF₄ + 2N₂O

この反応式は、シス型二フッ化二窒素がガラス成分である二酸化ケイ素(SiO₂)と反応し、ガラス容器を腐食する様子を示しています。そのため、シス型二フッ化二窒素の保存には、ガラス容器以外の材質の容器を使用する必要があります。

反応性

二フッ化二窒素は、多くの場合、シス型とトランス型の混合物として存在しますが、それぞれの異性体を単離して精製することも可能です。

シス型二フッ化二[窒素]]は、[[五フッ化アンチモン]のような強力なフッ化物イオン受容体と反応し、N₂F⁺イオンを形成します。この反応は、次のように表すことができます。

N₂F₂ + SbF₅ → N₂F⁺[SbF₆]⁻

この反応において、シス型二フッ化二窒素は、フッ化物イオン(F⁻)を五フッ化アンチモンに供与し、N₂F⁺カチオンとヘキサフルオロアンチモン(V)アニオン[SbF₆]⁻を生成します。この反応は、シス型二フッ化二窒素の高い反応性を示すものです。

N₂F⁺イオンの結合距離

固体のN₂F⁺化合物において、窒素-窒素間の結合距離と窒素-フッ素間の結合距離は、それぞれ1.089(9)Åと1.257(8)Åと測定されています。これらの結合距離は、これまでに観測された中で最も短い結合距離の1つであり、N₂F⁺イオンの高い反応性と特異的な結合状態を示唆しています。

まとめ

二フッ化二窒素は、シス型とトランス型の2つの異性体を持つ、反応性の高い無機化合物です。特にシス型はガラスを侵食する性質を持つため、取り扱いには注意が必要です。また、強力なフッ化物イオン受容体と反応してN₂F⁺イオンを形成するなど、特異的な反応性を示します。N₂F⁺イオンの結合距離は非常に短く、その特異的な結合状態は今後の研究課題と言えるでしょう。

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