二人歩記

二人歩記：長渕剛の代表曲、そして一時代の記録

1981年10月21日、日本の音楽シーンに新たな一曲が登場しました。長渕剛の8枚目のシングル、「二人歩記」です。この曲は、後に彼の妻となる石野真子との出会いと、交際中にマスコミに追われる日々を経験したことを背景に生まれた、深く心に響くフォークバラードです。

長渕剛自ら作詞作曲、プロデュースを手掛け、編曲は徳武弘文と瀬尾一三が担当しました。アコースティックギターを基調としたシンプルなサウンドは、長渕剛の力強い歌声と相まって、聴く者の心を掴みます。楽曲は、1981年発表のアルバム『Bye Bye』に収録された後、シングルカットされましたが、その前にリリースされたライブアルバム『長渕剛LIVE』にもライブバージョンが収録されている点が興味深いところです。

二人の出会いは、長渕剛がラジオ番組『オールナイトニッポン』のパーソナリティを務めていた時期に遡ります。番組のディレクターを介して石野真子をゲストに招いたことがきっかけとなり、二人の関係が始まりました。しかし、交際が発覚したことで、マスコミの注目を集め、多大なバッシングにさらされることになります。

「二人歩記」の歌詞には、そんなマスコミの騒動の中で苦悩する二人の姿が切々と歌われています。世間の好奇の目、プライバシーの侵害、そして、人格を否定するような報道にさらされた長渕剛の怒りや葛藤が、繊細なメロディーと力強い歌声にのせて表現されています。この経験は、同時期にリリースされたアルバム『Bye Bye』に収録されている「賞金めあての宝さがし」にも反映されており、その複雑な心境を窺い知ることができます。

音楽情報サイト『CDジャーナル』は、「二人歩記」について、伸びやかで朗らかな歌声とシンプルなギターサウンドが印象的で、ストリングスの導入によってドラマチックな展開を見せるナンバーと評しています。また、石野真子との結婚が決まった際の心境がテーマとなっていると指摘しています。

シングルリリース後、「二人歩記」はオリコンチャートで最高55位を記録し、7週にわたってランクインしました。売上枚数は約2.3万枚にのぼりました。

シングル「二人歩記」のB面には「少しだけほほえみが」が収録されていましたが、この曲はオリジナルアルバムには収録されていません。

『CDジャーナル』の批評では、歌唱、歌詞、ストリングスのバランスが絶妙で、完成度の高い一曲であると高く評価され、引越しをする男の新たな人生への決意が感じられるとコメントされています。

ライブパフォーマンスにおいては、『長渕剛LIVE』に収録されたライブバージョンが知られていますが、その後は長らく演奏されることはありませんでした。しかし、2009年の30周年記念ライブ、そして2013年、2015年、2017年のライブツアーにおいて、再び演奏されるようになり、多くのファンを感動させました。

「二人歩記」は、単なる恋愛ソングを超えて、一時代の社会状況や、マスコミとの関係、そして、長渕剛自身の揺れる心を反映した、彼の代表曲の一つとなっています。数多くのベストアルバムにも収録されており、その音楽的価値、そして時代性を物語っています。

もう一度検索