二契約神学

二契約神学の概念

二契約神学（Dual-covenant theology）とは、ユダヤ人に与えられたモーセの律法と神との「永遠の契約」と、それに対する異邦人の救済の方法についての考え方を指します。この理論は、異邦人が救われるためには必ずイエス・キリストによる必要があるという見解を持ち、ユダヤ人に対してはキリスト教の伝道が行われないことが特徴です。

フランツ・ローゼンツヴァイクの立場

この理論を代表するのは、ユダヤ人神学者のフランツ・ローゼンツヴァイクです。彼は著書『救いの星』の中で、キリスト教がユダヤ人の神を「神」としてではなく「イエス・キリストの御父」として認識することを主張しました。彼によれば、神に至る道はイエス・キリストを通じてのみ開かれており、彼を介さなければ御父に到達することはできないとする考え方を強調しています。しかし、すでに神と共に存在するユダヤ人に対しては、状況が異なると述べました。

聖書における神の知恵

新約聖書のローマ人への手紙にある言葉では、神の知恵と知識が深遠であることを称賛しています。この見解は、神の救いの計画を人間が完全には理解しきれないことを示しており、ルター的な救済論の誤謬を示唆する解釈がなされることもあります。また、ヤコブの手紙ではアブラハムやラハブといった信仰に伴った行いの模範が示されており、行動と信仰の重要性も強調されています。

二契約神学の支持者

二契約神学を支持した神学者には、アメリカのラインホルド・ニーバーなどが含まれています。さらに、カトリック教会においては1980年に教皇ヨハネ・パウロ2世がユダヤ人指導者に対して「神によって取り消されない契約による神の民」という内容のスピーチを行い、ユダヤ人の契約を尊重しています。

福音派における見解

福音派の中にもイスラエルを支持する立場を持つ信徒がいます。アメリカの牧師ジョン・ハギーは、あらゆる宗教の人々がイエスを信じる必要がある中で、ユダヤ人にはキリスト教によって置き換えられない神との契約が存在すると述べています。

結論

二契約神学は、ユダヤ人と異邦人の救いに関して分かりやすい枠組みを提供する理論であり、多くの神学的議論を呼んできました。ユダヤ教の伝統とキリスト教の教義との間の複雑な関係を探求する上で、重要な視点の一つとして位置づけられています。この考え方は、異なる宗教的背景を持つ人々の相互理解を促すための鍵を提供するかもしれません。

もう一度検索