二木康之

二木康之：発達神経学を究める医師の一生

二木康之氏は、1947年兵庫県加古川市に生まれました。幼少期、右股関節結核を患い、複数の病院で治療を受けながら自宅療養を余儀なくされます。長期にわたる闘病生活は、後に医学の道へと進む原動力となります。小学校2年生の時に大阪厚生年金病院で手術を受け、小児整形外科病棟に入院。そこで出会った多くの患児たちと過ごした日々は、氏の医師としての道を決定づける重要な経験となりました。

明石市立衣川中学校、兵庫県立明石高等学校を経て、大阪大学医学部を卒業。学生時代には全国障害者問題研究会阪大医学部学生サークルを結成し、初代部長を務めました。このサークルには、後に著名な医学者や医師となる多くの仲間が集っていました。

卒業後は大阪大学医学部附属病院小児科で研修を行い、その後は大阪けいさつ病院、耳原総合病院などで小児科医として勤務。大阪府衛生部にも勤務し、府立母子保健総合医療センターの開設準備にも携わりました。この間、吉祥院病院小児科の高谷清医師のもとで指導を受け、研鑽を積みました。

その後、大阪大学医学部研究生として研究活動を行い、大阪府立母子保健総合医療センター小児神経科長を経て、2000年4月に佛教大学社会福祉学部教授に就任。2008年4月には保健医療技術学部に移り、学部長を務めました。その他、健康管理センター長、安全衛生委員会委員長などを歴任し、大学運営にも大きく貢献しました。

大阪府立母子保健総合医療センターの開設時(1981年10月)には、大阪府職員労働組合衛生支部母子医療センター分会初代副分会長として、センター設立時の人員要求実現、特に母性棟と新生児棟の夜勤体制確立に尽力しました。また、小児医療部門開設に向けたパンフレットの執筆も担当するなど、組織運営にも積極的に関わっています。

30代前半から変形性股関節症に悩まされ、40歳で右股関節固定術を受けました。しかし、術後には腰痛に苦しむことになります。58歳時には腰痛軽減のため、関節固定をはずして人工股関節に転換する手術を受け、症状は改善しました。この自身の経験は、「股関節固定者の二次障害と人工股関節全置換術」として論文にまとめられています。

二木氏の専門は発達神経学です。研究テーマは、障害の早期診断のための発達神経学的診察手法、神経生理学的検査の臨床応用、神経学的ハイリスク児の予後研究など多岐に渡ります。特に、障害の早期診断が早期治療・対応に繋がるという考えを基に研究に取り組んでいます。

数々の学術論文を発表し、2017年にはAlbert Nelson Marquis Lifetime Achievement Award、2016年には読売療育賞などを受賞。Royal Society of Medicine (英国王立医学会)やNew York Academy of Sciencesなどにも所属するなど、国際的な活動も積極的に行っています。

二木氏の研究は、新生児期からの発達に関する神経科学的な知見を積み重ね、小児神経学の発展に大きく貢献しています。その研究成果は、多くの小児神経学関連の教科書や論文に引用されており、高い評価を受けています。現在も、超低出生体重児の長期予後や新生児の認知機能に関する研究を精力的に続けています。

ご家族は、奥様と社会保険労務士の資格を持つ長男がいます。長年の研究活動と臨床経験を通して培われた知識と経験は、未来の医療を担う人材育成にも繋がっています。二木康之氏は、まさに発達神経学の第一人者であり、医学界における大きな存在感を持っています。

もう一度検索