二見虎三郎

二見虎三郎（ふたみ とらさぶろう）

二見虎三郎は、日本の幕末期に越後長岡藩（現在の新潟県長岡市周辺）に仕えた藩士です。生年は定かではありませんが、慶応4年（1868年）にその生涯を終えました。

彼は長岡藩の家老として藩政改革や軍備近代化を推進した河井継之助の側近として知られ、河井からの厚い信頼を得ていました。その信頼の深さを示すエピソードとして特筆されるのが、慶応4年5月14日に行われた、長岡藩と新政府軍との和平交渉の場となった小千谷談判への随行です。

当時、戊辰戦争が激化する中で、長岡藩は奥羽越列藩同盟に参加するか、新政府に恭順するかという重大な岐路に立たされていました。河井継之助は藩の独立自治を目指し、新政府に対してあくまで中立の立場を主張しようと試みます。そのために、新政府側の岩村精一郎と会談の場を持ったのが、越後小千谷にある慈眼寺でした。

緊迫した空気の中で行われたこの歴史的な会談に、長岡藩から同行したのは河井継之助ただ一人、そして二見虎三郎だけでした。これは、二見が単に身辺の世話をする者ではなく、藩の命運を左右する極秘かつ重要な場に河井が共に臨むことを選んだ、信頼できる腹心であったことを雄弁に物語っています。残念ながら、この談判は物別れに終わり、長岡藩は新政府軍との開戦という悲劇的な道を選ばざるを得なくなります。

談判が決裂し、藩が避けられない戦乱へと巻き込まれることになったその夜、河井継之助は二見虎三郎を相手に酒を酌み交わし、詩を吟じたといいます。これは、河井の近習であった松蔵が後に語った回想に含まれる一節です。国の未来、藩の行く末、そして自らの運命に対する河井の深い懊悩や決意が、この酒席に凝縮されていたのでしょう。そこに黙って寄り添い、河井の心情を受け止めた二見の存在は、河井継之助という傑物が孤高の決断を下す上で、精神的な支えとなったのかもしれません。

小千谷談判の決裂後、長岡藩は新政府軍との激しい戦いを開始します。この戊辰戦争において、二見虎三郎も長岡藩士として戦場に身を投じました。戦線が越後から会津へと移る中、二見は会津の地で戦いました。慶応4年、会津七日町口で行われた戦闘において、彼は軍目付という立場で部隊を指揮していましたが、この激戦の中で命を落としました。

生年は不明ながら、その短い幕末の生涯を、藩主への忠誠と河井継之助への深い信頼に捧げた二見虎三郎。小千谷での重要な会談に同行し、河井の最後の宴に立ち会った彼の存在は、激動の時代を生きた無名の藩士たちの生き様を今に伝えています。会津の地に散った彼の名は、長岡藩の悲劇的な歴史の一頁に刻まれています。

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