二重裁判

二重裁判の概要

『二重裁判』は、日本の推理小説家小杉健治による作品で、法の建前と社会的な有罪観の乖離をテーマにしています。物語は、会社社長夫妻が殺害され、容疑者として古沢克彦が逮捕されるところから始まります。克彦は、自分の無実を主張するものの、彼の自宅からは被害者宅の金庫から消えた300万円と、血痕のついたワイシャツが見つかり、彼を有罪とする証拠とされています。

あらすじの展開

克彦の妹、秀美は、兄の無実を信じ続けるが、克彦が拘置所で自ら命を絶ったことにより、彼女の人生は大きく狂ってしまいます。秀美は、兄の名誉を回復するための手段を探り、再審請求が可能か弁護士に相談します。しかし、法の原則である「有罪が確定するまで無罪」により、それは難しいことがわかります。事件の背後には、被害者の娘婿が借金を抱えていたという状況証拠や、兄が陥れられたという主張する愛人の弟の存在が浮き彫りにされます。

秀美は、真実を確かめるため、愛人とその弟が経営するクラブに潜入し、兄の無実を証明する証拠を探し続けます。やがて、彼女が特ダネを求めてマンションに急行した際、透の遺体と血のついた果物ナイフを握る彼女の姿が現場で発見され、現行犯逮捕されてしまいます。秀美は犯行の動機を「無実の兄を陥れた男への復讐」と語り、自らの法廷で兄の無実を証明しようとしますが、物語は予想外の方向へ進みます。

登場人物とその関係

物語には多様なキャラクターが登場します。秀美は青山のブティックでデザイナー見習いとして働いており、彼女の兄である克彦は、彼女を守るために長らく奮闘してきました。兄妹の支え合いが物語の中核を形成しています。また、弁護士の瀬能は、克彦の名誉回復のために手助けをし、彼の妹である秀美をも支えています。政治的な背景を持つ江藤佳子は、秀美を妹のように思って支える一方で、複雑な人間関係の中で揺れ動く姿が描かれています。

このように、『二重裁判』は、法の厳格さと社会の偏見との葛藤を描き出し、登場人物たちの心理的な動きや関係が緻密に描かれています。さまざまな証拠や証言が交錯する中で、真実が徐々に明らかにされていく様子は、読む者を惹きつけずにはいられません。

作品の評価と影響

この作品は1987年に『週刊文春ミステリーベスト10』で第8位に選ばれ、また、2009年までに3度もテレビドラマ化されています。物語のテーマは、現代日本における法と社会の矛盾を考えさせるものであり、多くの読者に対して深い印象を残しています。警察の捜査やメディアの報道が人々の認識に与える影響など、社会的メッセージも含まれており、推理小説としてのエンターテインメント性と、社会的な考察が交差する作品となっています。

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