五フッ化ヒ素

五フッ化ヒ素：性質、合成、反応、安全性

五フッ化[ヒ素]は、[ヒ素]とフッ素(F)からなる無機化合物です。無色の気体として存在し、特徴的な分子構造と高い反応性を持ちます。毒物としても知られており、取り扱いには細心の注意が必要です。

分子構造と性質

五フッ化ヒ素の分子構造は、中心のヒ素原子を頂点とする三方両錐形です。固体状態では、ヒ素とフッ素の結合距離が軸方向と赤道方向でわずかに異なり、軸方向が171.9 pm、赤道方向が166.8 pmとなっています。このわずかな違いは、分子の対称性と結合の強さに影響を与えています。

無色の気体である五フッ化ヒ素は、強力な電子受容体として知られています。これは、ヒ素原子が電子を受け入れる能力が高いことを示しています。この性質を利用して、様々な化学反応に使用されます。

合成方法

五フッ化ヒ素は、いくつかの方法で合成できます。最も一般的な方法は、ヒ素とフッ素の直接反応です。この反応は、高温高圧条件下で行われます。


2As + 5F₂ → 2AsF₅


さらに、三フッ化[ヒ素]にフッ素を反応させることによっても合成可能です。


AsF₃ + F₂ → AsF₅


また、三塩化[ヒ素]を用いた合成法も知られています。この方法は、[フッ化水素]と[塩素]を反応剤として用います。


AsCl₃ + 5HF + Cl₂ → AsF₅ + 5HCl


これらの反応は、それぞれ異なる条件下で行われ、生成物の収率や純度に影響を与えます。

反応性

五フッ化ヒ素は、その強力な電子受容体としての性質により、様々な化合物と反応します。特に、四フッ化硫黄(SF₄)との反応は注目に値します。この反応では、イオン結合型の錯体が生成されます。


AsF₅ + SF₄ → SF₃⁺ + AsF₆⁻


この反応は、五フッ化ヒ素が四フッ化硫黄からフッ化物イオンを受け取り、六フッ化ヒ素アニオン(AsF₆⁻)を形成することを示しています。生成するSF₃⁺は、非常に反応性の高いカチオンです。

安全性

五フッ化ヒ素は、日本の毒物及び劇物取締法において毒物に指定されています。強い発癌性と目に対する刺激性を有しており、取り扱いには十分な注意が必要です。また、気体であるため、吸入による健康被害のリスクも高く、適切な換気や防護具の着用が不可欠です。販売には、第一種高圧ガス販売主任者の資格が必要です。

五フッ化ヒ素を取り扱う際には、安全データシート(SDS)を熟読し、適切な安全対策を講じる必要があります。誤って吸入したり皮膚に付着したりした場合には、直ちに医師の診察を受けるべきです。

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