五明

五明（ごみょう、pañcavidyā）は、古代インドで体系化された学問の分類であり、仏教の発展と普及とともに、周辺地域へもたらされた。日本へも仏教を介して伝わり、文化や思想に影響を与えた。

仏教においては、学問領域を大きく二つに分類する考え方があり、それが「内の五明」と「外の五明」である。これらは、仏教徒が学ぶべき内容と、一般社会で必要とされる知識を区別したものである。

内の五明

「内の五明」は、仏教僧侶や研究者が専門的に学ぶべき５つの分野を指す。

1. 声明（しょうみょう、śabda）: これは、文法、言語学、文学を包括する分野である。仏典の読解や教義の正確な理解、そしてそれらを表現するための言語能力を養うことを目的とする。
2. 因明（いんみょう、hetu）: 論理学にあたる分野であり、議論や推論の形式、妥当性を研究する。正しい知識を獲得し、誤った見解を排除するために重要な学問である。
3. 内明（ないみょう、adhyātma）: 仏教の教理そのものを研究する分野である。仏教の哲学、倫理、瞑想など、その本質を深く理解することを追求する。
4. 工巧明（くぎょうみょう、śilpakarmasthāna）: 工芸、数学、暦学など、実用的な技術や知識を扱う分野である。寺院の建設、仏像の製作、正確な暦の作成など、仏教活動に必要な技能を習得する。
5. 医方明（いほうみょう、cikitsā）: 医学、薬学、呪法などを扱う分野である。病気の治療、健康維持、そして精神的な安定をもたらすための知識や技術を学ぶ。

外の五明

一方、「外の五明」は、世俗的な知識体系を指す。これは、一般の人々が生活する上で必要となる学問分野を示す。

「外の五明」は、「内の五明」と異なり、因明、内明の代わりに、以下の2つを含む。

1. 呪術明（じゅじゅつみょう）: 呪文や儀式など、超自然的な力を用いて目的を達成しようとする技術を扱う。
2. 符印明（ふいんみょう）: 呪符や呪印の作成、使用に関する知識を扱う。これらは、病気の治療や災厄からの保護を目的として用いられる。

このように、五明は、仏教における学問の体系化を示すだけでなく、古代インドの知識観や世界観を反映している。リベラル・アーツ（一般教養）の概念と関連付けて理解することも可能である。

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