五月橋 (木曽川)

五月橋（さつきばし）は、岐阜県加茂郡八百津町と瑞浪市の境界を流れる木曽川に架かる重要な構造物です。この橋は、丸山ダムのさらに上流、およそ10キロメートル地点に位置する景勝地、深沢峡の深い谷を跨いでいます。特に、谷の中央部を吊橋形式で渡る点が特徴的です。

この橋は、岐阜県道352号大西瑞浪線の一部として指定されています。1954年（昭和29年）に供用が開始され、完成当初は自動車交通を担う道路橋として地域間の連絡において重要な役割を果たしていました。

しかし、その後の歴史は自然災害によって大きく影響を受けることになります。1982年（昭和57年）に発生した記録的な集中豪雨は、木曽川流域に甚大な被害をもたらしました。この豪雨により、五月橋周辺を通る岐阜県道だけでなく、広域的な交通路である国道418号線までもが被災し、この地域の交通網は寸断されました。

災害発生以降、五月橋を含む被災区間は通行止めとなりました。橋が架かる深沢峡一帯は、地質的に不安定で落石が非常に発生しやすい地域として知られています。このような厳しい自然条件下では、道路施設の本格的な復旧が極めて困難であったため、一度閉鎖された通行は長期化し、2024年現在に至るまで再開されていません。事実上、道路としての機能は失われた状態が続いています。

かつては、車両の通行は不可能になったものの、橋床が鉄製の金網でできた状態となり、歩行者のみが通行できる時期もありました。地域の住民や訪れる人々にとって、わずかながらも橋を利用する機会が残されていたのです。

ところが、近年になって状況は再び変化しました。木曽川では、既存の丸山ダムを再開発し、より大規模な新丸山ダムを建設する事業が進められています。この一大プロジェクトに伴い、五月橋についてもダム建設事業に関連する新たな橋への架け替えが計画されることになりました。これに伴う準備工事や本体工事が進められているため、2024年時点では安全確保のため、かつて可能だった歩行者を含め、一切の通行が全面的に禁止されています。かつては歩行者向けとして細々と利用されていた時期もあった五月橋ですが、現在は完全にアクセスが断たれている状態です。

五月橋の主要な仕様は以下の通りです。

形式: 橋の構造は、谷を跨ぐ中央部分が鋼構造の吊橋形式、両岸のアプローチ部分が鋼鈑桁橋という複合的な構成となっています。
供用開始: 1954年（昭和29年）に完成し、利用が始まりました。
全長: 橋全体の長さは123.2メートルです。
幅員: 設計上の全体の幅は3.6メートルですが、かつて歩行者向けに開放されていた時期の実質的な通行可能幅員は1.5メートル程度でした。
* 区間: 岐阜県加茂郡八百津町潮見地区と岐阜県瑞浪市日吉町地区を結んでいます。

五月橋は、完成から約70年の歴史を持ちますが、その多くを自然災害による通行止めの影響下にありました。地域にとって重要なインフラでありながら、厳しい自然環境と大規模な河川改修事業に翻弄され続けている橋と言えるでしょう。今後の架け替え計画が、どのような形で実現するのか注目されます。

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