五極真空管

五極真空管 (Pentode)

五極真空管（ごきょくしんくうかん）は、5つの電極を搭載した電子部品であり、主に信号の増幅に用いられます。この真空管は、1926年にジル・ホルストとベルナルト・D・H・テレゲンによって発明されました。特に、3つの制御グリッドを持つ増幅真空管として広く認識されています。

概要

五極管は、歴史的にはスクリーン電極管から発展したもので、その構造にはアノード電極とスクリーン電極の間に追加されたグリッドが含まれています。この追加グリッドはサプレッサー・グリッドと呼ばれ、電子の二次放出による性能の限界を克服しています。これにより、五極管はより高い出力を可能にし、1960年代から1970年代にかけては広く利用されました。21世紀初頭には、主に高出力無線機や楽器アンプ、オーディオ機器向けに少量が生産されています。

五極管の種類

通常の五極管

通常の五極管は「シャープ・カットオフ」または「ハイ・スロープ五極管」として知られ、増幅率が安定しています。これにより、特定のアンプ設計に適した特性を持ち、代表的な型番としてEF37AやEF86などがあります。

リモート・カットオフ五極管

リモート・カットオフ五極管は、通常の五極管に比べて大きな信号電圧を扱うことができ、高いダイナミック・レンジを持つ設計が特徴です。このタイプは、特に自動利得制御が必要なラジオの高周波段に多く用いられています。

パワー五極管

パワー五極管は、通常の五極管よりも大電流で動作するために設計され、大きな出力力を持っています。代表例として、EL34や6F6などがあり、特定用途に合わせた設計がなされています。

五極管の利点

四極管と比べると、五極管はより高い出力と安定性を提供します。特に、サプレッサー・グリッドの存在により、温度や電源電圧の変動の影響を受けにくく、高いパフォーマンスを維持します。

三極管との比較

五極管と三極管を比較すると、五極管の方が一般的にはノイズが高くなりやすいものの、出力段としての効率が良いため、多くのオーディオ機器に使用されています。また、五極管は電源電圧の変化に対しても高い安定性を持つため、さまざまな環境で信頼性があります。

使用例

五極管は、民生用ラジオやテレビ受信機に広く使われてきました。特に、第二次世界大戦中には、軍用電子機器にも使用され、連合国の電子機器優勢に寄与しました。戦後もテレビ受信機や高品質オーディオ機器において重要な役割を果たしました。

五極管は、現代においても一部のニッチ市場で生産され続けています。特に高出力の無線やオーディオ製品における使用が見られ、時代を超えてその重要性は変わりません。

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