井上文太

井上文太（いのうえ ぶんた、本名：井上隆保）は、大阪府大阪市梅田に生まれ、幼少期から絵の才能を発揮しました。7歳で兵庫県尼崎市に転居後も、図画工作で数々の賞を受賞するなど、その才能は早くから開花していました。報徳学園高等学校卒業後、大手メーカーのインハウスデザイナーとして活動していましたが、1990年に画家・金子國義の作品に衝撃を受け、その場で画家になることを決意します。金子國義の門下に入り、約9年間の修行を経て、1998年に独立。以後、「井上文太」として本格的に活動を開始しました。

井上文太の作品は、大きく分けて「蓮」シリーズと「波」シリーズの2つに分類されます。「蓮」シリーズは、心象風景を幻想的に描いたものであり、「羊水の中の記憶」を表現していると本人は語っています。一方、「波」シリーズは、日本の風景や動植物をモチーフにしており、「日本人としての遺伝子的な記憶」を表現していると述べています。これらの作品には、師である金子國義や澁澤龍彦、琳派、歌川国芳、鳥獣戯画などからの影響が見られる一方で、独自の世界観が強く打ち出されているのが特徴です。

画家としての活動以外にも、井上文太はキャラクターデザインや刺青など、多岐にわたる分野で才能を発揮しています。特に、NHK教育テレビで放送された三谷幸喜脚本の『連続人形活劇 新・三銃士』では、キャラクターデザインを担当し、その人形美術は高い評価を得ました。また、彫師としても活動し、L'Arc〜en〜Cielのhydeなど、著名人の体に刺青を施しています。井上は刺青について、「人体の美しさを引き出すための手法」と捉え、その独自のアート観を表現しています。

井上文太は、個人や企業を問わず、様々な分野とのコラボレーションも積極的に行っています。ファッションブランド、自動車メーカー、音楽アーティスト、ホテルなど、多岐にわたるジャンルで、その才能を活かした作品を制作しています。これらの活動を通して、自身の表現の幅を広げ、常に新たなアートの可能性を追求していると言えるでしょう。

2011年には、ロックフェラー財団会長のデイヴィッド・ロックフェラー・ジュニアが会長を務めるNPO法人、セイラーズ フォー ザ シーの日本支局理事に就任するなど、社会貢献活動にも積極的に取り組んでいます。また、東日本大震災の復興支援として、被災地でのアートワークショップの開催や画材の提供など、精力的に支援活動を継続しています。近年では、館山市ふるさと大使（館山市芸術大使）に任命され、地域に根差した活動も展開しています。

2022年には、HYDEが企画プロデュースした初の画集「閃き ～ iNSPiRATiONS～ 画狂人 井上文太」が発売され、これを記念した個展も開催されました。また、HYDEのライブステージの舞台美術を担当するなど、その活動は多岐にわたります。2023年には、竹久夢二伊香保記念館で個展を開催するなど、その活動はますます活発になっています。2024年には、伏見稲荷大社や加藤神社への作品奉納、肥後の里山ギャラリーでの展示など、歴史や文化と結びついた活動にも力を入れています。さらに、映画「八犬伝」の公開に合わせ、作品「令和八犬伝」をラッピングしたバスが運行開始されるなど、その活動は留まるところを知りません。

井上文太の作品は、ホイットニー美術館やポンピドゥー・センターといった世界的な美術館にも所蔵されており、その芸術性は国際的に認められています。多岐にわたる活動を通して、常に新しい表現を追求し続ける井上文太は、現代アートシーンにおいて、非常に重要な存在と言えるでしょう。

主な展覧会として、「部屋 〜comon a my house（うちへおいでよ）〜」（1991年）、「蓮 〜Lotus〜」（1999年）、「INOUE BUNTA in Wonderland」（2010年）、「画狂人 井上文太展“ iNSPiRATiONS - 魔法の林檎”」（2022年）などがあります。これらの展覧会を通して、井上文太の多様な表現と、その創造性の高さを窺い知ることができます。

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