井上義朗

井上義朗（いのうえ よしお）は、1962年に千葉県で生まれた経済学者です。現在は中央大学商学部教授として教鞭を執り、経済理論を専門としています。彼の研究は、経済学の歴史的変遷を辿りながら、現代経済の諸問題を深く考察することに重点を置いています。

学歴と職歴

井上義朗は、1984年に千葉大学人文学部法経学科経済学専攻を卒業後、1987年に同大学大学院社会科学研究科経済学専攻修士課程を修了しました。さらに研究を進め、1991年には京都大学大学院経済学研究科博士課程を修了し、経済学博士の学位を取得しています。博士論文のテーマは「『後期』ヒックス研究：市場理論と経験主義」であり、このテーマは彼の研究活動における重要な柱の一つとなっています。

1991年には千葉大学法経学部の専任講師として教職に就き、その後1994年に同大学の助教授に昇進しました。2001年からは中央大学に移り、商学部の助教授、2002年には同大学の教授に就任し、現在に至ります。

研究テーマと業績

井上義朗の研究は、経済理論、特に市場経済の理論的基盤と、経済思想史に焦点を当てています。彼の著作からは、古典経済学から現代経済学に至るまでの幅広い知識と、経済学に対する深い洞察がうかがえます。

著書には、博士論文を基にした『「後期」ヒックス研究　市場理論と経験主義』（1991年）をはじめ、『市場経済学の源流　マーシャル、ケインズ、ヒックス』（1993年）では、経済学の巨人たちの思想を詳細に分析し、その現代的意義を明らかにしています。

また、『エヴォルーショナリー・エコノミクス 批評的序説』（1999年）では、進化経済学の視点を取り入れ、経済現象を動的に捉える試みを展開しています。さらに、『コア・テキスト経済学史』（2004年）では、経済学史の主要なテーマを体系的に解説し、経済学を学ぶ上での重要なテキストを提供しています。

近年の著書では、『二つの「競争」競争観をめぐる現代経済思想』（2012年）で、競争という概念を多角的に分析し、現代社会における競争の意味を問い直しています。また、『読むミクロ経済学』（2016年）と『読むマクロ経済学』（2016年）は、ミクロ経済学とマクロ経済学の基礎を解説し、経済学を学ぶための入門書として多くの読者に支持されています。

さらに、『「新しい働き方」の経済学 アダム・スミス『国富論』を読み直す』（2017年）では、古典経済学の祖であるアダム・スミスの思想を現代の労働問題に適用し、新たな働き方のあり方を考察しています。

井上義朗の著作は、経済学の専門家だけでなく、一般の読者にも広く読まれており、彼の研究は現代社会における経済問題への理解を深める上で重要な貢献をしています。

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