井上鑑昭

井上 鑑昭（いのうえ のりあき）

井上鑑昭は、明治35年（1902年）12月3日に和歌山県西牟婁郡に生まれ、平成6年（1994年）4月13日に東京都国立市で亡くなった日本の武道家です。彼は親英体道の創始者であり、合気道の開祖である植芝盛平の叔父でもあります。本名は井上要一郎で、「鑑昭」という名前の他にも「祥治」、「聖祥」、「方軒」、「照祥」といった異名を持っていました。一般的には「鑑昭」として知られています。

幼少期と武道の始まり

井上は裕福な家庭で育ち、商業活動を行う家に生まれましたが、幼少期は体が弱く、多くの病気にかかって寝込んでいることが多かったとされます。父や叔父である植芝盛平は、彼に体を鍛えることを勧め、10歳の時に講道館柔道の高木喜代市に師事し、柔道の道を歩み始めました。

大正3年（1915年）、井上は植芝を訪ねて北海道に移住し、この時に大東流合気柔術の武田惣角と出会います。武田の勧めにもかかわらず、井上は大東流に入門することはありませんでした。この経験は、彼が自らの武道観を形作る上で重要な役割を果たしました。

大本教との出会い

井上は、18歳の時に植芝の紹介で大本教の出口王仁三郎と出会います。彼はこの出会いを通じて、武道における「親和力」の概念を確認し、出口の指導の下、植芝とともに柔術を基にした新たな合気武術を教え始めました。井上自身、武道においては相手を理解し、共に高め合うことが大切だと考えていました。

合気武術の発展

昭和10年（1939年）に発生した第二次大本弾圧事件の後、植芝は出口の元を離れますが、井上は大本教に残り、合気武術を広めることに注力します。昭和21年（1946年）には武術の名称を「親和体道」と改め、さらには「井上惣角流」や「親英体道」と呼ばれる時期もありました。彼の理念は、武道だけでなく、人とのつながりや調和を重視するものでした。

晩年と逸話

井上は生涯にわたり親英体道の普及に努め、平成6年に91歳で亡くなるまで、彼の教えを多くの弟子たちに受け継がせました。彼にまつわる逸話には、「橋の上から川に飛び降り、水面で飛び上がり橋の上に戻った」といった神秘的なエピソードや、生活が困窮していた江上茂に対する無償の教えも含まれています。江上は、井上の教えに影響を受け、独自の空手スタイルを追求しました。

まとめ

井上鑑昭は、日本の武道の発展に寄与した重要な人物であり、彼の教えや理念は今なお多くの人々に受け継がれています。体を鍛えることだけでなく、心の成長や人との調和を重視した彼の姿勢は、武道を超えた深い影響を与えるものとなっています。

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