亘理町自衛官殺害事件

亘理町自衛官殺害事件

亘理町自衛官殺害事件は、2000年（平成12年）8月に宮城県亘理郡亘理町で起きた殺人事件です。

この事件は、当時パート従業員であった妻のAが、保険金取得を目的として、夫である陸上自衛官Fの殺害を計画したものです。Aは、かつて仙台市内でホステスとして働いていた際の客であったBをはじめ、C、D、Eといった複数の共犯者と共謀しました。実行犯らは自宅で夫Fの首を絞めて殺害に至りました。犯行当時、主犯格であるAは、Bからの助言に従い、アリバイを工作するため娘2人と共に外出していました。

事件発生後、通報を受けた宮城県警察の捜査員は、病院で遺体を検視した後、現場である自宅に臨場しました。そこでAから「帰宅したら夫が首を吊っていた」との説明を受けました。警察は、現場の状況、遺体の状態、そしてAの供述などを総合的に判断し、当初この事件を自殺として処理しました。

事件の首謀者であるAら共犯者たちは、夫Fにかけられていた総額1億数千万円に上る生命保険金を受け取り、これを山分けしました。Aはその後、受け取った保険金を元手に、娘たちと共に沖縄県に移り住み、新たな生活を送っていたとされます。

しかし、この事件の真相は、発生から数年後に思わぬ形で明らかになります。共犯者の一人であったBとCが、2004年に発生した別の重大事件である仙台風俗店経営者強盗殺人事件に関与した容疑で逮捕され、その捜査が進められる過程で、2000年の亘理町における夫殺害事件についても関与が浮上したのです。共犯者たちの供述や証拠の収集により、当初自殺とされた夫Fの死が、妻Aによる保険金目的の計画殺人であったことが判明しました。

事件発覚後、関係者は次々と逮捕され、裁判となりました。仙台地方裁判所では、共犯者たちに対する判決が順次言い渡されました。2010年9月10日には共犯者Eに対し懲役15年、同年10月1日には共犯者Dに対し懲役13年6ヶ月の実刑判決がそれぞれ下されました。そして、主犯である妻Aに対しては、同年11月19日に無期懲役の判決が言い渡されました。
Aは一審判決を不服として控訴しましたが、仙台高等裁判所は2011年5月24日、一審の無期懲役判決を支持し、Aの控訴を棄却しました。これにより、妻Aの無期懲役が確定しました。現在、Aは60代を迎え、服役を続けています。

この事件は、保険金殺人の典型例として知られるほか、当初警察によって自殺と判断されながら、別の事件の捜査によって真相が明らかになった点、また、複数の共犯者が関与した計画的な犯行であった点などから注目されました。共犯者のCは、本件以外にも1999年に起きた東京都中野区暴力団組員殺害事件でも殺人罪に問われていますが、そちらについては一審で無罪判決を受けています。

亘理町自衛官殺害事件は、完全犯罪を目論み、長期にわたって隠蔽されていた事件が、予期せぬきっかけで明るみに出たケースとして、日本の犯罪史における特異な事例の一つとなっています。

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