交響曲第2番 (フェラン)

交響曲第2番『キリストの受難』

交響曲第2番『キリストの受難』（原題：Sinfonía no. 2 para Banda Sinfónica "La Passió de Crist"）は、スペインの著名な作曲家、フェレール・フェランが吹奏楽のために作曲した作品です。彼の交響曲としては第2作にあたるこの作品は、西洋美術や音楽の歴史において古くから重要な主題とされてきた「キリストの受難」の物語を音楽で表現したものです。

作品の特色

キリストの受難を描いた音楽作品は数多く存在しますが、その多くはJ.S.バッハの作品に代表されるように、合唱とオーケストラが中心となったオラトリオ形式で書かれています。しかし、フェランの『キリストの受難』は、この壮大な物語を「吹奏楽」という編成で描き出した点に最大の特色があります。合唱を用いず、大編成の吹奏楽による豊かな響きと多様な音色によって、受難の場面が劇的に、あるいは叙情的に表現されます。これは、吹奏楽という媒体の可能性を広げる試みとしても注目されるべき点です。

構成

この交響曲は、以下の3つの楽章で構成されています。各楽章には具体的なタイトルが付けられており、描かれる情景が明確に示されています。さらに、楽譜の各部には、その音楽が関連する聖書からの引用が記されており、聴き手は音楽とテキストを結びつけながら物語を追体験できるよう工夫されています。

第1楽章：降誕、幼児虐殺、洗礼

（Nacimiento. Muerte de los inocentes. Bautismo.）

速度・拍子: Adagio non molto e cantabile、4/4拍子
この楽章では、キリストの誕生という穏やかな始まりから、ヘロデ王による悲劇的な幼児虐殺、そしてヨハネによる洗礼の場面へと音楽が進んでいきます。静けさ、悲劇性、そして神聖な儀式といった対照的な情景が、4/4拍子の中で描かれると考えられます。

第2楽章：三つの誘惑

（Las tres tentaciones）

速度・拍子: Senza Measure
この楽章は、キリストが荒野で悪魔から受けた三度の誘惑という、内面的な葛藤を描いています。Senza Measure（拍子指定なし）という特殊な指示は、定まったリズムや拍子に捉われない、自由で変化に富んだ音楽語法が用いられていることを示唆しており、心の揺れ動きや精神的な試練が表現されていると推測されます。

第3楽章：寺院への到着、最後の晩餐、逮捕、判決、磔刑、希望

（Llegada al Templo. La Santa Cena. Captura. Juicio. Crucifixión. Esperanza.）

速度・拍子: Allegro moderato、6/8+2/4拍子
最後の楽章は、受難物語のクライマックスとなる一連の出来事が描かれます。寺院への到着、弟子たちとの最後の晩餐、ゲッセマネでの逮捕、ピラトによる判決、そして最も劇的な場面である磔刑。しかし、物語はそこで終わらず、「希望」という結末を迎えます。Allegro moderatoに始まり、6/8と2/4という異なる拍子が組み合わされることで、緊迫感や劇的な展開、そして最後の場面における感情の大きな変化が表現されていると考えられます。

演奏時間と出版

全曲を通しての演奏時間は、約39分程度とされています（これは、ヘンリー・アダムス指揮、ブニョール・ラ・アルティスティカ交響吹奏楽団による演奏例に基づきます）。

この作品は2003年にスペインのイベルムシカ社から出版されました。現在では、オランダのデ・ハスケ出版や、アメリカのハル・レナード社（地域限定での販売）からも取り扱われており、世界中の吹奏楽団体がこの壮大な受難曲に取り組む機会を得ています。

参考文献

* フルスコアに付された解説

この交響曲は、吹奏楽作品としては異例とも言える重厚なテーマを扱い、フェランの作曲家としての力量と、吹奏楽の表現力の深さを示す作品と言えるでしょう。

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