京成電車疑獄事件

京成電車疑獄事件

京成電車疑獄事件（けいせいでんしゃぎごくじけん）は、1928年9月26日に発覚した汚職事件です。この事件は、京成電気軌道が東京都の浅草への乗り入れを目指していた際に起こりましたが、同時期に東武鉄道が同じ地域への進出を図っており、両者の競争が募る中で発生しました。

背景

当時、総武本線の両国駅から御茶ノ水駅への延長、および千葉までの電化事業が進行中でした。そして京成は浅草への乗り入れを実現させるために、東武鉄道に先を越されることへの不安から焦りが生じました。この焦りから、京成の社長である本多貞次郎が逮捕に至る事態が発生しました。

この事件は、板舟権疑惑や江東青物市場疑惑、自動車購入疑惑などと並び、「東京市会四大疑獄」として広く知られています。京成電鉄は1923年から浅草乗り入れのために6度にわたって出願しており、その6度目の出願の最中に不正が発覚したのです。

汚職の実態

事件では、16万円（現在の貨幣価値で3000万円を超えると見積もられています）が、京成の出願に有利になるよう工作するために政界に流れました。東京市会議員の半数がこの事件に関与していた他、衆議院の議員や新聞社関係者も逮捕され、贈賄幇助や収賄の罪に問われました。特に、京成の総務部長であった正力松太郎や東京毎日新聞の千葉博巳も事件に巻き込まれたのです。

事件のその後

京成の出願は1931年7月にやっと許可されましたが、その頃には東武鉄道が先行して業平橋から浅草雷門を結ぶ区間を開通させていました。この情勢から、京成は浅草への乗り入れを断念し、代わりに筑波高速度電気鉄道を吸収合併しました。そして日暮里経由で1933年に上野公園に乗り入れることに成功しました。

一方で、浅草乗り入れ特許は京成から東京市に譲渡されましたが、市電の既存線と競合するため、実際には活かされず失効してしまいました。

最終的な乗り入れ実現

この事件から30年後の1960年には、都営地下鉄1号線（現在の都営地下鉄浅草線）が開業し、京成はこの線との直通運転を開始することで、ようやく浅草への乗り入れを実現しました。この事件の影響は時を経てもなお影を落とし、京成の事業運営や都市交通の発展における重要な一幕として位置付けられています。

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