京都大学臨界集合体実験装置

京都大学臨界集合体実験装置（KUCA）について

京都大学臨界集合体実験装置、通称KUCAは、大阪府泉南郡熊取町にある京都大学複合原子力科学研究所の一部として位置しています。KUCAは、原子炉物理学の研究や教育訓練を目的とした臨界実験装置であり、1つの原子炉が3つの炉心架台を持つという珍しい構造を備えています。この機能により、同時に複数の実験が行えるため、効率的な運用が可能となっています。

設立の背景と目的

KUCAの設立は、先に存在した京都大学研究用原子炉（KUR）が原子炉物理学や設計研究に不向きであるとの声から始まりました。また、1965年開設のブルックヘブン国立研究所のHFBRに触発された、中性子利用の研究者からの高出力の研究炉に対する要望も背景にあります。そこで、KUCAは単なる原子炉物理の研究にとどまらず、中性子の利用研究やトリウムサイクルに関する研究をも行うように設計されました。

1972年5月にKUCAの設置許可が申請され、1974年3月30日に竣工しました。その後、1974年8月6日に初臨界を達成し、1975年からは全国の大学生や大学院生に対する炉物理の実験がスタートしました。海外の学生に対する実験提供は2002年から始まり、これまでに4200名以上が受講しました。

構造と特性

KUCAの設計における画期的な点は、異なる型式の3つの炉心を共通の駆動装置で運転できることです。これは、1つの炉心で実験している間に他の炉心で準備を行うことで、稼働率の向上が実現できることを意味します。また、設計上は十二角形の建物に1つの加速器と3つの架台が区画ごとに配置され、各区画は遮蔽壁で隔てられています。

技術的仕様

KUCAは濃縮ウラン非均質型の複数架台方式を採用し、熱出力は100Wに設定されています。燃料には93%濃縮ウラン-アルミ合金の板状が使用され、各架台は異なる特性を持っています。具体的には、A架台とB架台が固体減速炉心用であり、C架台は軽水減速炉心用です。

近年の動向

2014年の福島第一原子力発電所事故以降、運転の厳格化が進み、KUCAも同年に運転を停止しました。新規制基準に適合するため、2016年には審査に合格し、2017年に運転を再開しました。これにより、今後も原子力基礎研究や教育訓練の場としての役割を継続できる環境が整いました。

KUCAは、原子力の未来を担う人材育成や、新たな研究を推進する重要な施設であり、今後も多くの研究成果を上げていくことが期待されています。

もう一度検索