京都市歌

京都市歌：古都の歴史を彩る旋律

京都市には、明治時代から現代に至るまで、複数の市歌が存在します。これらの市歌は、京都市の歴史や文化、市民の精神を映し出す鏡として、重要な役割を果たしてきました。本稿では、それぞれの市歌が誕生した背景や特徴、そして現在にいたるまでの変遷を詳しく解説します。

現行の京都市歌（1951年制定）

現在の京都市歌、通称「昭和市歌」は、1950年の京都国際文化観光都市建設法施行を記念して制定されました。歌詞は一般公募によって選ばれ、作曲は諸井三郎が担当しました。過去の市歌とは異なり、制定の告示が行われている点が特徴です。

1959年には、ビクターレコードからSPレコードが発売され、京都市立音楽短期大学合唱団と京都市立醒泉小学校児童合唱団の斉唱が収録されました。1994年には、東山区円山公園近くに歌碑が建立され、市民に親しまれています。

興味深いことに、京都府を含む三府（東京府、大阪府）は戦前に府歌を制定していませんでした。そのため、「京都府の歌」が1984年に制定されるまで、京都市歌が府歌の代替として紹介されることもありました。

過去の京都市歌

昭和市歌が制定される以前にも、京都市には複数の市歌が存在しましたが、いずれも制定の告示がなく、「慣例上の市歌」とされていました。

初代京都市歌（1898年発表）

初代京都市歌、通称「明治市歌」は、黒川真頼が作詞、上真行が作曲を手掛け、京都市小学校長会が選定しました。1898年1月29日に発表されたこの市歌は、現存する最古の市歌として知られる横浜市歌よりも11年早く作られた「日本最古の市歌」とされています。

2代目京都市歌（1915年発表）

2代目京都市歌、通称「大正市歌」は、大正天皇の即位大典記念事業として作成されました。歌詞は一般公募され、柏木亀蔵の作品が採用されました。作曲は田村虎蔵が担当しました。

大正市歌は、昭和初期には市内の全小学校で歌唱指導が行われるなど、普及が図られました。昭和13年版から18年版までの市政概要には、「京都市歌」として歌詞と楽譜が掲載されています。

1933年には、ニットーレコードからSP盤が発売され、声楽家の近藤義次と市内小学校選抜児童の斉唱が収録されました。また、1939年には、行進曲「京都市歌」がSP盤に収録されています。

地理歴史唱歌 京都（1906年）

池辺義象作詞、吉田恒三作曲の「地理歴史唱歌 京都」も、京都市歌と通称されることがあります。しかし、近年では、明治市歌のような愛郷心の涵養に重点が置かれていないことなどから、「（2代目）市歌には位置づけられないのではないか」とする説も提示されています。

京都市に関連するその他の楽曲

京都市では、市歌以外にも、様々な楽曲が制作されてきました。例えば、第二次世界大戦末期には「決戦京都市民の歌」が、戦後には「京都市消防の歌」や「京都市市民憲章の歌」が発表されています。

また、市内の一部の行政区では、区歌や区民音頭が作成されています。例えば、下京区では区制110周年を記念して「下京区の歌」が、伏見区では「伏見音頭」が、山科区では「山科音頭」がそれぞれ作成されています。

京都市へ編入された市町村の歌

京都市に編入された市町村の中には、独自の市町村歌を制定していた地域もあります。例えば、伏見市は「伏見市歌」を、京北町は「明日に向かって」をそれぞれ制定していました。

これらの市町村歌は、現在は廃止されていますが、それぞれの地域の歴史や文化を伝える貴重な資料として、大切に保管されています。

京都市歌は、単なる歌にとどまらず、京都市の歴史や文化、市民のアイデンティティを象徴する存在です。それぞれの時代の市歌を振り返ることで、京都市の歩みをより深く理解することができるでしょう。

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