人々 (クルアーン)

人々（スーラ・ナース）

「人々」とは、クルアーンにおける第114番目の章であり、最終章に位置していますが、これは最後に啓示されたものではなく、むしろ初期に与えられた啓示の一つとされています。これはアラビア語で「سورة الناس」と記され、6つの節（アーヤ）から構成されている非常に短い章です。

ムアウウィザート

この章は、他の2つの章、すなわち第113章と第112章と共に「ムアウウィザート」と称されます。これら3つの章は、特に神に保護を求める意義が強調されており、日常生活において病気や不安を抱える際に読むことが信仰の実践として広まっています。特に「お縋り申す」と始まるこの章は、祈りや呪文のような特質を帯びており、神の加護を求める手段として多くの人に親しまれています。

内容とテーマ

この章は、悪しき者や精霊が引き起こす災厄から逃れ、人々を導く神、すなわちアッラーに呪文のように祈りを捧げるという内容で構成されています。冒頭の「お縋り申す (aʿūḏu)」は神の救いを求める表現であり、これは感情に訴える響きを持っています。井筒俊彦の解釈によれば、この一節は理性的な表現ではなく、むしろ神憑りのような、シャーマニズム的な要素をも含んだ言葉です。

第4節から第5節にかけて描かれる「囁き」は、アラビア語において夜の闇の中から現れる超自然的なものとして解釈されており、人々に危害を加える悪しき力を象徴しています。この「囁き」は、善悪両方のジン（精霊）を暗示しており、特に第6節に挙げられる悪しきジンはリチャード・ベルによってサタンに類されるし、これはイスラームの信仰において重要なテーマです。

結論

「人々」は、神の保護を求める人々に対するメッセージを持った短いが力強い章です。病気や就寝前にこの章を唱えることは、実際に多くの人々によって行われ、神を通じた加護の確保が重視されていることがわかります。このように、クルアーンの最後の章である「人々」は、信仰の実践としてだけでなく、心の支えとなる重要な位置づけを持っているのです。

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