人は見た目が9割

『人は見た目が9割』は、2005年に新潮新書から刊行された、心理学者である竹内一郎（ペンネーム：齋藤 茂太）によって著された書籍です。コミュニケーションに関する長年の講義経験から生まれた本書は、私たちが他者から受ける印象の大部分が、外見に代表される非言語情報によって決定されるというメッセージを伝えています。

本書で言う「見た目」とは、単に容姿やルックスを指すものではありません。外見はもちろんのこと、身のこなし、表情、声のトーン、身を置く空間、人との接触、そして色やにおいといった、言葉以外のあらゆる要素を含んだ広義な概念として捉えられています。これらの非言語的な情報が、他者とのコミュニケーションにおいて大きな影響力を持つと著者は説きます。

書籍がヒットしたことで、「人は見た目が9割」という言葉が一人歩きし、外見至上主義的な誤解を招いた側面もあります。しかし、本書の意図は、外見を磨くことだけを推奨するものではありません。むしろ、私たちが無意識のうちに受け取っている非言語情報の重要性を認識し、それを理解することで、より円滑なコミュニケーションを築くことを目的としています。

人は、相手から発せられる言葉だけでなく、その人の雰囲気や態度からも多くの情報を読み取ります。これらの非言語情報は、時に言葉以上に雄弁であり、相手に与える印象を大きく左右します。例えば、自信に満ちた表情や落ち着いた声のトーンは、相手に安心感を与え、信頼関係を築く上で重要な要素となります。

本書では、社会学や心理学など、様々な学問分野の知見を基に、非言語コミュニケーションのメカニズムが解説されています。私たちは、日々の生活の中で、無意識のうちに多くの非言語情報をやり取りしており、その影響力は計り知れません。本書を読むことで、非言語コミュニケーションに対する理解が深まり、人間関係やビジネスシーンにおいて、より効果的なコミュニケーションを実践するためのヒントが得られるでしょう。

2007年には、この書籍の内容を検証するテレビ番組も放送され、大きな反響を呼びました。書籍はベストセラーとなり、2006年のトーハン調べによるベストセラーランキングでは総合7位、新書・ノンフィクション部門では2位を獲得、2022年時点での累計発行部数は200万部を突破しています。この記録的な売上は、本書が多くの人々の関心を集め、共感を呼んだことの証左と言えるでしょう。

『人は見た目が9割』は、単なるハウツー本ではありません。私たちが他者とどのように関わり、どのように印象を与えているのかを深く考えさせられる一冊です。非言語コミュニケーションの重要性を認識し、それを意識することで、より豊かな人間関係を築き、自己実現へと繋げることができるかもしれません。

もう一度検索