人形宮廷楽団

人形宮廷楽団

『人形宮廷楽団』（ギニョールきゅうていがくだん、Orchestre royal de guignols）は、由貴香織里による日本の漫画作品。

概要

『別冊花とゆめ』（白泉社）にて2008年8月号から2010年6月号まで連載された。単行本は全5巻で、話数カウントはOp.（オーパス）#と表記される。

あらすじ

物語の舞台は、感染すると死に至り、人々を襲う「蠢く人形（ギニョール）」へと変貌する奇病・ガラテイア症候群が蔓延する世界。そんな絶望的な状況下で、禁じられた「黒の聖譚歌（オラトリオ）」を謡い、感染者や街の人々を慰問する旅を続ける謎めいた宮廷楽団が存在した。

彼らの手元にある「黒の賛美歌書」には、様々な奇跡を起こす歌が収められているという。しかし、彼らは正規の宮廷楽団とは異なり、金次第であらゆる曲を奏でる「裏の宮廷楽団」と呼ばれていた。

登場人物

闇の宮廷楽団

ルチル

楽団長を務める歌謡い（シャントゥール）。腰まで届く長い髪と中性的な美しい容姿を持ち、その歌声は人形を滅ぼす力を持つ。マイペースな性格で、どこか人を食ったような言動が目立つ。実は、正規の宮廷楽団である神聖宮廷楽団の元楽団長であり、妹が一人いる。

エレス（エレスチャル）

ピアノ担当。トゥーサンという街の城主の娘で、一人称は「僕」。本名はセレス（セレスタイト）。双子の兄の名であるエレスを名乗っている。彼女の奏でるピアノの旋律は人形を惹きつける力を持つ。過去にその力に気づかず、自らの音色でギニョールを呼び寄せ、街の子どもたちを感染させてしまった。その贖罪のため、そして自らの生きる意味を求めて楽団に身を投じる。

琥珀

バイオリン担当。額から右頬にかけて走る傷が特徴的。オッドアイの持ち主で、人形の存在を感じると右目が疼く。ガラが悪く短気な性格だが、面倒見の良い一面も持つ。銃やナイフなど、あらゆる武器の扱いに長けている。グィンデルと同様に、人形に対抗できる音楽の才能を買われ、楽団の一員となった。

グィン（グィンデル）

チェロ担当。寡黙な大男だが、ペットのハリネズミを溺愛しており、彼女が傷つけられると仲間であろうと容赦しない。普段は物静かだが、怒ると非常に恐ろしい。怪力の持ち主でもある。琥珀と同様、人形に対抗できる音楽の才能を買われ、契約によって楽団の一員となった。

宮廷関係者

ジェムシリカ

世界の頂点に君臨する女王。美しい人形のような容姿を持つが、狂気に満ちた残酷な性格。常に玉座に座り、絶対的な権力を行使する。その正体は、ルチルの妹であるコーディエ（コーディエライト）。幼少の頃は赤毛でそばかすがあり、わがままで活発な少女だったが、現在の姿からは昔の面影は感じられない。

モリオン・スティルバイト

女王直属の神聖宮廷楽団の楽団長。ルチルとコーディエの従兄弟で幼馴染。子供の頃は内気な性格で、ルチルやコーディエと仲良く遊んでいた。女王として変貌してしまったコーディエを深く憐れみ、彼女のために一生を捧げることを誓っている。

スピネル

宮廷のスパイ。ルチルと同じ夜歌鳥（フィロメーラ）であり、声色を自在に使い分けることができる。ルチルの宮廷修道院時代の後輩。

その他

リヒター / ミアシャム / ジャスパー

元老院（ル・セナ）の中心メンバー。外見は子供だが、老人のような口調で話す。ベルチェをルチル達の元へ差し向ける。

ベルチェ

ルチルの裏の宮廷楽団のかつての楽団員で、当時はピアノを担当していた。首には黒い病巣が刻まれている。

用語

蠢く人形（ギニョール）

ガラテイア症候群に感染した者のこと。感染から変異までの潜伏期間は人によって異なり、感染者は一様に人形のような姿と動きになるため、こう呼ばれる。ギニョールに噛まれたり、血を体内に入れると感染するため、「発病者は例外なく炎で浄化する」という法が定められている。肌は硬化しており、通常の人間では破壊することができない。

黒の聖譚曲（くろのオラトリオ）

世界のどこかにあるとされる幻の黒の賛美歌書に記された禁じられた歌。奇跡の旋律とも呼ばれ、ギニョールに変異した人々の意識を一時的に甦らせたり、細胞の活性化・死滅を促すことができる。

神雷（エクレール）

ギニョールの感染が一定割合を超えると発動される、周囲一帯を焼き尽くす女王ジェムシリカの裁きの光。

関連項目

* ギニョール（フランス語） - フランス語で、下から手を入れて操る人形のこと。

もう一度検索