人生の空から

「人生の空から」

「人生の空から」（たびのそらから）は、日本のシンガーソングライター、松山千春が1980年9月21日にリリースした、自身のキャリア通算9作目にあたるシングル盤です。この作品は、彼の音楽活動においていくつかの点で特筆すべき意味を持っています。

NEWSレコードからの船出

このシングルは、松山千春が自らの音楽制作と発表の場として中心的に設立に関与したレコードレーベル、NEWSレコードから最初に発売された記念すべき作品です。それまで所属していたレコード会社から独立し、自身のレーベルからのリリース第一弾として「人生の空から」が選ばれたことは、彼の音楽活動における新たなスタート地点を示す出来事でした。

異例のシングル構成

「人生の空から」のリリース当時、日本のシングル盤は通常、A面に表題曲、B面（あるいはカップリング）に別の1曲を収録した、計2曲入りの1枚構成が一般的でした。しかし、「人生の空から」は、この慣例を破る異例の形態をとっていました。それは、シングル盤が2枚組となっており、合計で4曲が収録されていたという点です。これは当時の音楽市場において非常に珍しい試みであり、リスナーにとってはシングルの価格でより多くの楽曲を手にすることができるという魅力がありました。この意欲的な構成は、アーティストとして、また新設レーベルとして、作品内容へのこだわりやリスナーへのアプローチ方法を示すものと言えます。

発売当初のトラブル

市場にリリースされた直後、「人生の空から」の一部製品において、製造過程でのプレス不良が原因で音飛びが発生するという問題が発覚しました。レコード盤の表面に微細な傷や凹凸が生じることにより、再生中に針が正しくトレースできず、音が途切れたり飛んだりする現象です。この品質上の問題を受けて、発売元は迅速な対応を取りました。具体的には、音飛びの発生が確認された製品を一時的に市場から回収するという措置が講じられました。これは、リスナーに良質な音楽体験を提供するという観点から重要な判断でしたが、ファンにとっては一時的に入手が困難になるという影響もありました。その後、問題が解消された製品が改めて市場に出荷されたと考えられますが、この発売初期のトラブルは、「人生の空から」にまつわるエピソードとして語り継がれています。

「人生の空から」は、自身が立ち上げたレーベルからの門出を飾り、異例の複数曲収録形式を採用し、さらには発売時のアクシデントにも見舞われるなど、単なる1枚のシングルにとどまらない、松山千春の1980年代初頭における音楽活動の勢いや試み、そして向き合った課題を示す象徴的な作品と言えるでしょう。

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