人見竹洞

人見竹洞

人見竹洞（ひとみ ちくどう）は、寛永14年12月8日（1638年1月22日）に生まれ、元禄9年1月14日（1696年2月16日）に没した、江戸時代の著名な儒学者であり、漢詩人です。幼名は竹、通称は又七郎、友元。名は節、宜卿。字は時中。竹洞、鶴山、括峰、菊蘆、余慶など、多くの号を持ちました。彼は本姓である小野を中国風に一字に改め、野節、野宜卿と名乗ることもありました。

生涯

竹洞は、幕府医官である人見玄徳の次男として京都で生を受けました。6歳の時に江戸へ移り、林羅山、林鵞峰といった当時を代表する儒学者に師事し、学問を修めました。万治元年（1658年）には京都で半年間医学を学び、同時に石川丈山から詩作の指導を受けました。寛文元年（1661年）、25歳で幕府儒官に任じられ、『本朝通鑑』や『武徳太成記』といった重要文献の編纂に携わりました。また、天和2年（1682年）には朝鮮通信使の応接役を務めるなど、外交の場でも活躍しました。

人見竹洞の才能は学問だけに留まらず、文化交流にも貢献しました。弟は『本朝食鑑』の著者である人見必大であり、甥には俳諧師として知られる人見香山（俳号：午寂）がいます。彼の門下からは、梁田蛻巌のような優れた人材が育ちました。

その功績は高く評価され、昭和3年（1928年）には正五位が追贈されました。

人物像

竹洞は詩文や隷書といった文事に造詣が深く、朱舜水や東犀心越といった人物から最新の中国文化を積極的に学びました。また、山口素堂を通じて俳諧にも関心を寄せるなど、幅広い分野で文化的な交流を深めました。

特に注目されるのは、朱舜水との交流です。彼らの間で交わされた書簡は現存しており、林鵞峰をはじめとする林門と朱舜水との間に生じた確執を、竹洞が調停したことが知られています。さらに、竹洞は東犀心越との交渉窓口としての役割も担い、牛島に所有していた別荘「水竹深処」は、心越との交流拠点となりました。

人見竹洞は、学問、文化、外交の多岐にわたる分野で才能を発揮し、江戸時代の文化発展に大きく貢献した人物として、その名が刻まれています。

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