人造ネコ

人造ネコ：怠け者トムとハイテクネズミ捕り機のドタバタ劇

1952年9月6日に公開されたトムとジェリーの作品『人造ネコ』（原題：Push-Button Kitty）は、怠け者なトムと、最新式のネズミ捕り機械、そして知恵者のジェリーが織りなす痛快なコメディーです。

物語は、掃除をするお手伝いさんが、いつも以上に陽気なことから始まります。寝そべってチーズを運ぶジェリーを無視するトムに、「ゆっくり寝てていいのよ」と優しく語りかけるお手伝いさん。そこに届いた小包の中身は、期待を胸に開けたお手伝いさんを待ち受けていたのは、「メカーノ」と名付けられた機械式のネズミ捕りでした。

奇妙な姿をしたメカーノに、トムとジェリーは当初は嘲笑します。しかし、スイッチが入った途端、メカーノは驚くべき能力を見せます。ジェリーを素早く察知し、頭部から飛び出すハンマーで気絶させ、スリングショットで屋外に放り出すのです。

メカーノの圧倒的な性能に意気消沈したトムは、お手伝いさんから「時代遅れのネコ」と嘲笑され、家から追い出されてしまいます。お手伝いさんはメカーノに「ネズミを追い出すことだけ」と命令し、トムの後釜として期待を寄せます。

一方、追い出されたジェリーは家に戻るため、様々な手段を試みます。しかし、メカーノは手紙に隠れたジェリーを見つけ出し、ホースに隠れたジェリーを斧で切断しようとします。スリングショットで飛び込んできたジェリーはグローブでキャッチされるなど、メカーノの多彩な武装と優れた感知能力の前に、ジェリーは太刀打ちできません。

そこでジェリーは、ゼンマイ仕掛けのネズミ型おもちゃを大量に家の中に送り込みます。機械ネズミの大群を察知したメカーノは、肉切り包丁、斧、電気鋸、大砲、ダイナマイトとあらゆる武器を駆使して、それらを殲滅しようとします。家の中はメチャクチャになり、お手伝いさんは悲鳴を上げながら、トムに助けを求めます。

メカーノは、機械ネズミを追いかけるうちに、激しく家具などにぶつかり、バラバラに分解してしまいます。そして、メカーノの電子頭脳は、運悪くトムの口の中に飛び込み、トムはそれを飲み込んでしまいます。

トムが戻ってくると、お手伝いさんは大喜びします。「やっぱり生きたネコが一番！」とトムと熱い握手を交わします。しかし、ジェリーがメカーノのスイッチを入れると、トムはメカーノのような動きを始めます。お手伝いさんの制止も虚しく、トムは家財道具を破壊しながら、機械ネズミを追いかけ、暴走を続けるのでした。

この作品では、トム、ジェリー、お手伝いさん、そしてメカーノそれぞれのキャラクターが際立っています。怠け者で頼りないトム、知略に富むジェリー、期待と失望を繰り返すお手伝いさん、そして予想外の能力を持つメカーノ。それぞれの行動が、物語に絶妙なスパイスを加えています。

また、この作品は、お手伝いさんが登場する最後の作品としても知られています。そのため、この作品には、シリーズを通して培われたキャラクター性と、物語の終わりを告げる寂しさのようなものが感じられます。

『人造ネコ』は、トムとジェリーの定番であるドタバタ劇と、最新技術を駆使した未来的な要素が融合した、何度見ても楽しめる傑作です。笑いとスリル、そして少しの切なさを感じさせる、忘れられない作品と言えるでしょう。

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