人魚伝説

桂銀淑『人魚伝説』

『人魚伝説』（にんぎょでんせつ）は、韓国出身の歌手、桂銀淑（ケイ・ウンスク）によって1998年4月1日に発表された通算18枚目のシングル作品です。日本のポピュラー音楽史において、彼女のキャリアの中で一つの転換点を示す楽曲として位置づけられます。発売元はトーラスレコードでした。

楽曲の特質と背景

この「人魚伝説」は、神秘的なタイトルが示唆するイメージとは異なり、ラテン音楽のリズムを取り入れた、非常に軽快でダンサブルな楽曲として仕上げられています。これまでの桂銀淑が歌ってきた、情感豊かなバラードや演歌・歌謡曲の枠に留まらない、新たな音楽的アプローチが試みられた作品であり、彼女の表現力の幅広さを示すこととなりました。当時の音楽シーンにおいても、新鮮なサウンドとしてリスナーに受け入れられました。

本作が特に大きな話題を呼んだのは、作曲家・浜圭介氏とのコラボレーションが、約5年の時を経て再び実現した点にあります。浜圭介氏は、かつて「酔いしれて」や「夢おんな」、そして1993年に発表されたヒット曲「アモーレ ～はげしく愛して～」など、桂銀淑の代表曲や重要な楽曲を数多く手掛けてきました。その相性の良さから、両者の組み合わせは「ゴールデンコンビ」と称され、多くのファンに支持されていました。1993年の「アモーレ ～はげしく愛して～」を最後に、両者の共同作業は一時中断していましたが、「人魚伝説」での再会は、待望の「ゴールデンコンビ」復活として、大きな期待とともに迎えられました。

この「人魚伝説」での共作は、単なる一時的な顔合わせに留まらず、その後の桂銀淑の音楽活動において、再び積極的に浜圭介氏の作曲した楽曲を歌うようになるという、重要な契機となりました。長年にわたり彼女の歌声の魅力を最大限に引き出してきた盟友とのタッグが再び本格的に始動したことは、その後のキャリアパスを形成する上で、極めて大きな意味を持っています。

収録曲詳細

シングルには表題曲「人魚伝説」と、カップリング曲として「冬凪の海岸ホテル」が収録されています。両曲とも、作詞家と作曲家、そして編曲家によって才能が結集されています。

人魚伝説
作詞は岡田冨美子氏が担当しました。
作曲は前述の通り、浜圭介氏が手掛けています。
編曲は今泉敏郎氏が担当し、ラテン調の軽快なリズムを生み出しました。

冬凪の海岸ホテル
作詞は大津あきら氏が担当しました。
作曲は浜圭介氏です。
編曲は表題曲と同じく今泉敏郎氏が手掛けています。今泉氏による統一感のあるサウンドメイキングが、シングル全体の世界観を構築しています。

楽曲の持つ意義

『人魚伝説』は、1998年という時代に桂銀淑が発表した作品として、彼女の音楽性の新たな広がりを示しただけでなく、長年の音楽的パートナーである浜圭介氏との「ゴールデンコンビ」の復活という、キャリア上の重要な出来事を象徴するシングルです。この楽曲を契機に、再び浜圭介氏の作品を歌うようになったことは、その後の彼女の活動に大きな影響を与えました。ラテンのリズムに乗せた伸びやかな歌声は、リスナーに新鮮な感動を与え、「人魚伝説」は桂銀淑のディスコグラフィーにおいて、単なる一曲にとどまらない、歴史的な意義を持つ作品として記憶されています。

本作は、同年の音楽シーンを彩った作品の一つでもあり、1998年の音楽を振り返る際に言及されることもあります。

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