今井紘一

今井 浩一（いまい ひろかず）は、日本の建築家として、主に東北地方を活動の舞台としています。彼の建築哲学の中核をなすのは、地元の豊富な森林資源である秋田杉を駆使した木造建築と、周囲の自然環境との調和を目指した設計です。地域固有の気候や風土に寄り添い、持続可能な建築のあり方を追求しています。

活動と設計思想

今井氏の建築設計は、木材、特に秋田杉の持つ温もり、強度、調湿性といった素材の特性を最大限に引き出すことに重点を置いています。彼は、地産地消の理念に基づき、地域で育まれた木材を地域で活用することで、森林資源の循環と地域産業の活性化に貢献しようとしています。設計においては、自然光や風といった自然エネルギーを巧みに利用するパッシブデザインを積極的に取り入れ、過度な機械設備に頼らずとも快適でエネルギー効率の良い空間を実現することを目指しています。また、建てられる場所の景観や歴史、文化といったコンテクストを尊重し、建築物が周囲の環境に溶け込むようなデザインを重視しています。

建築家としての個人事務所である「今井ヒロカズ設計事務所」を運営する傍ら、地域の建築家や木材業者と連携するための組織「設計チーム木協同組合」の設立に参画し、副理事長として組合活動を牽引しています。この協同組合を通じて、地域材の利用推進や木造技術の向上、共同での設計・施工活動などを行っています。さらに、建築物の環境性能を評価する「CASBEE（建築環境総合性能評価システム）」の戸建評価委員としても活動しており、環境負荷の低減に貢献する建築の普及にも力を入れています。

略歴

今井浩一氏は1965年、秋田県能代市に生を受けました。建築の道を志し、多摩美術大学美術学部建築科（現在は環境デザイン学科）で専門的な学びを深め、1988年に卒業しました。卒業後、建築家・西方里見氏が主宰する西方設計工房にてキャリアをスタートさせました。1990年には株式会社大建設計東京事務所に移籍し、大規模な建築プロジェクトにも携わる中で経験を積み重ねました。1996年には独立を果たし、「今井ヒロカズ設計事務所」を設立、自身の設計活動を本格的に開始しました。2004年には、地域における木造建築の推進を目指し、設計チーム木協同組合の設立に尽力し、副理事長に就任しました。

主な受賞歴

今井氏の建築作品は、その優れた設計と環境配慮が高く評価され、様々な賞を受賞しています。特に代表的な受賞歴は以下の通りです。

2007年: 木の建築賞優秀賞 - 対象作品: 国際教養大学学生宿舎
木材の新たな可能性を引き出し、その魅力を伝える優れた建築作品に贈られる賞です。
2008年: JIA環境建築賞優秀賞 - 対象作品: 国際教養大学学生宿舎
公益社団法人日本建築家協会が主催する、環境に配慮した優れた建築を表彰する権威ある賞です。同一作品が木材関連の賞と環境建築賞の両方を受賞したことは、その設計が多角的に評価されたことを示しています。
2008年: 第29回東北建築賞作品賞 - 対象作品: 能代市立浅内小学校
東北地方の建築文化の向上に貢献する優れた建築作品に贈られる賞であり、地域に根差した公共建築としての質の高さが認められました。
2008年: 第2回エコハウスコンテストいわて「大賞」 - 対象作品: 洞清水の家
省エネルギー性能や環境負荷低減に優れた住宅を評価するコンテストで最高位にあたる「大賞」を受賞し、そのエコ性能が証明されました。

これらの受賞は、今井氏の建築活動が、素材の活用、環境への配慮、地域性への貢献といった様々な側面から高い評価を得ていることを物語っています。彼の作品は、東北地方における地域材を活用した持続可能な建築の模範例の一つとなっています。

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