今村裕志

今村 裕志

今村 裕志（いまむら ひろし）は、日本の物理学者です。現在、産業技術総合研究所に所属し、ナノスピントロニクス研究センターで研究活動を行っています。専門分野はスピントロニクスとナノデバイスに関する理論研究であり、これらの最先端分野において重要な貢献をしています。

経歴

今村氏は、1989年（平成元年）3月に宮崎県立都城泉ヶ丘高等学校を卒業しました。その後、東京大学大学院へ進学し、1998年（平成10年）3月に博士（理学）の学位を取得しています。博士論文の題目は『Theoretical Study of Quantum Dots in Magnetic Fields（磁場中の量子ドットの理論的研究）』でした。

研究者としてのキャリアは、2009年（平成21年）4月から東北大学大学院工学系研究科の客員教授を務めたことから始まります。翌2010年（平成22年）4月には、産業技術総合研究所に移籍し、ナノシステム研究部門の主任研究員に就任しました。そして、2012年（平成24年）4月からは、同研究所のナノスピントロニクス研究センター理論チームの研究チーム長として、チームを率いて研究を進めています。

研究活動と業績

今村氏の研究は、主にスピントロニクスとナノデバイスの理論的側面に焦点を当てています。特に、電子のスピンを利用した新しい機能性デバイスや現象の解明に取り組んでいます。これまでに、磁場中の量子ドットの理論をはじめ、磁性体と他の物質（例えば超伝導体）との界面におけるスピン輸送現象、例えばスピン依存トンネル効果やアンドレーエフ反射に関する理論研究を行ってきました。また、スピンポンピングによるスピン流の創出、ナノ狭窄構造における磁気抵抗効果、CPP-GMR（電流垂直面内磁気抵抗効果）の理論など、幅広いテーマで学術的な成果を発表しています。

これらの研究成果は、国際的なハンドブックや学術雑誌に多数の論文として掲載されています。海外の主要な著書の一部として、『Handbook of Magnetism and Advanced Magnetic Materials』や『Concepts in Spinelectronics』といった専門書籍の章を執筆しており、国内外のスピントロニクス研究コミュニティにおいてその業績は広く認識されています。国内の学術雑誌『まぐね』や『金属』、そして『日本物理学会誌』にも論文や解説記事を寄稿し、研究成果の普及や啓蒙活動にも貢献しています。

著書及び参考文献

H. Imamura and S. Maekawa, "Theory of Spin Dependent Tunneling," Handbook of Magnetism and Advanced Magnetic Materials, Volume 1, pp. 559-574, H. Kronmuller and S.S.P Parkin (Eds), John Wiley & Sons, Ltd., 2007.
H. Imamura, S. Takahashi, S. Maekawa, "Andreev Reflection at ferromagnet /superconductor interfaces,” Concepts in Spinelectronics, Chapter 9, pp. 371-394, Oxford University Press, Oxford UK, 2005.
安藤康夫, 水上成美, 家形諭, 谷口知大, 今村裕志, 大兼 幹彦, 宮﨑照宣, "スピンポンピングによるスピン流の創出 と物理現象," まぐね, Vol. 4, pp. 73-81, 2009.
佐橋政司・土井正晶・三宅耕作・今村裕志, "ナノ狭窄構型 磁気抵抗効果に関する最近の研究," まぐね, Vol. 2, pp. 510-516, 2007.
今村裕志, "CPP-GMRの理論," 金属（アグネ）, Vol. 77, pp. 982-987, 2007.
今村裕志, 青木秀夫, "強磁場中の量子ドット : 「電子分子」と魔法数," 日本物理学会誌, Vol. 53, No. 1, pp. 36-40, 1998.

外部リンク

* 今村裕志のホームページ

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