今給黎久

今給黎 久

今給黎久（いまきいれ ひさし）氏は、1932年（昭和7年）2月24日に生まれ、2013年（平成25年）7月19日にその生涯を閉じた、昭和から平成にかけて多方面で活躍した人物です。ジャーナリスト、実業家、そして政治家と、異なる分野で重要な役割を担いました。特に、新聞記者としての長年の経験と、故郷である鹿児島県枕崎市の市長としての活動は、彼のキャリアにおける二つの柱と言えるでしょう。

枕崎市で生まれた今給黎氏は、地元の鹿児島大学文理学部で学び、1956年（昭和31年）に卒業しました。大学での勉学を終えた後、彼はジャーナリズムの世界に進むことを選び、サンケイ新聞大阪本社に入社します。新聞記者としてキャリアをスタートさせた後、彼はサンケイグループ内で着実に実績を積み重ねていきました。東京本社では経済部次長を務め、国の経済動向や産業界の動きを深く取材・分析する重要なポストを担います。その後、サンケイ商業新聞社報道部長として報道部門を統括し、さらにサンケイリビング新聞社では編成局長を務めるなど、多様な部署で要職を歴任しました。これらの経験は、単なる記者にとどまらず、組織運営や経営にも関わる実業家としての側面を培うことにも繋がったと言えます。ジャーナリストとして激動の時代を取材し、情報を発信する最前線で活躍した経験は、後の彼の政治家としての活動にも大きな影響を与えたと考えられます。

長年にわたりジャーナリスト、実業家として活躍した後、今給黎氏は故郷である枕崎市の市政に貢献することを決意します。1990年（平成2年）1月に行われた枕崎市長選挙に出馬し、見事当選を果たしました。これにより、彼は長年のジャーナリズムの世界から、地方自治という新たな舞台へと活動の場を移すことになります。市長として彼は、当選以来2002年（平成14年）1月までの長きにわたり、3期にわたって枕崎市政を担いました。故郷のために尽力したいという思いのもと、地方行政の課題に取り組み、市民生活の向上や地域経済の活性化に尽力したことでしょう。3期という長期にわたる在任期間は、彼の手腕と市民からの信頼の厚さを示すものと言えます。

また、今給黎氏はジャーナリストとしての知見や、時代を洞察する視点から、いくつかの著作も世に出しています。彼の主な著書には以下のようなものがあります。

『入門ファクシミリエイジ : 仕事のやり方が一変する時、あなたはどう対処するか』（こう書房、1978年）
『シャープ先進技術頭脳集団』（オーエス、1986年）
* 『株式会社神戸市はいま : 宮崎市政/躍進の秘密』（オーエス、1987年）

これらの著作からは、彼が技術革新が社会やビジネスに与える影響、先進的な企業組織、そして地方自治体の取り組みといった幅広いテーマに関心を持っていたことがうかがえます。著述活動は、彼の多角的な視点と、情報を広く伝えることへの関心の高さを物語っています。

今給黎久氏の生涯は、一つの専門分野にとどまらず、ジャーナリスト、実業家、政治家として、それぞれの立場で社会に貢献しようとした挑戦の連続でした。サンケイグループでの要職を経て、故郷・枕崎市のリーダーとして市政を担った彼の足跡は、多様な経験が個人や地域社会にどのように還元されるかを示す一例と言えるでしょう。2013年に81歳で亡くなるまで、彼は常に変化する社会の中で自らの役割を探求し続けた人物でした。

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