今邑彩

今邑 彩

今邑 彩（いまむら あや）は、日本の小説家、推理作家として活動しました。本名は今井 恵子（いまい けいこ）です。1955年3月13日に長野県で生まれ、静岡県で育ちました。都留文科大学で英文学を修めた後、会社員として勤めますが、後に作家の道へ転じました。

作家への道とデビュー

今邑彩の作家としてのキャリアは、1989年に華々しく始まりました。東京創元社が、当時展開していた本格推理小説シリーズ「鮎川哲也と十三の謎」の掉尾を飾る一冊を公募する企画、「鮎川哲也と十三の謎 十三番目の椅子」（後の鮎川哲也賞）に、応募作である『卍の殺人』が見事最優秀作品として選ばれたのです。この受賞が、彼女の作家デビューとなりました。

作品世界

デビュー後、今邑彩はコンスタントに作品を発表し、その独自の世界観を築き上げていきました。彼女の作品は、精緻な謎解きが光る本格推理小説を基盤としながらも、時に不気味な雰囲気や超常的な要素、心理的な恐怖を描くホラーのテイストを巧みに織り交ぜているのが特徴です。

多くの長編作品を手がける一方で、短編の名手としても知られています。短編集には、日常に潜む狂気や不可解な出来事を描いた作品が多く収録されており、読後に独特の余韻を残します。

主なシリーズ作品としては、「警視庁捜査一課・貴島柊志シリーズ」があり、『i―鏡に消えた殺人者』に始まり、『「裏窓」殺人事件』、『「死霊」殺人事件』、『繭の密室』といった作品があります。また、ホラー色の濃い「蛇神シリーズ」として、『蛇神』、『翼ある蛇』、『双頭の蛇』、『暗黒祭』が発表されました。

シリーズ外の長編には、デビュー作の『卍の殺人』をはじめ、『ブラディ・ローズ』（後に『悪魔がここにいる』と改題）、『「通りゃんせ」殺人事件』（後に『赤いベベ着せよ…』と改題・加筆）、『金雀枝荘の殺人』、『そして誰もいなくなる』、『七人の中にいる』、『少女Aの殺人』、『ルームメイト』、『大蛇伝説殺人事件』、『いつもの朝に』などがあります。

短編集には、『時鐘館の殺人』、『盗まれて』、『鋏の記憶』、『つきまとわれて』、『よもつひらさか』、『鬼』などがあり、没後には短編集『人影花』も刊行されました。これらの短編集には、日本推理作家協会編纂のアンソロジーなど、多くの書籍に収録された作品が集められています。

映像化

今邑彩の作品は、その映像的な魅力から、しばしばテレビドラマや映画の原作となりました。テレビドラマでは、フジテレビ・関西テレビ系の「不思議サスペンス」枠で『隣の殺人』が、人気シリーズ「世にも奇妙な物語」では短編集『よもつひらさか』所収の『穴二つ』を原作とした「ネカマな男」や、『家に着くまで』を原作とした「推理タクシー」が放送されました。また、ドラマ・ミステリーズでは『盗まれて』所収の『情けは人の…』がドラマ化されています。

テレビ朝日系の「土曜ワイド劇場」でも多くの作品が映像化されており、『「裏窓」殺人事件』、『そして誰もいなくなる』、『七人の中にいる』（『ホーム・スイートホーム』として）、『少女Aの殺人』、『繭の密室』などが制作されました。

特に、長編小説『ルームメイト』は、彼女の死後である2013年11月に映画化され、話題となりました。

突然の逝去

今邑彩は、精力的な執筆活動を続けていましたが、2013年3月6日に東京都内の自宅で亡くなっているのが発見されました。死因は病死と推測されており、亡くなったのは2月上旬頃と見られています。享年57歳という、作家としてこれからますますの活躍が期待される中での突然の別れは、多くの読者や関係者に惜しまれました。

その短い生涯の中で生み出された数々の推理小説、怪奇小説は、今なお多くの読者に愛され続けています。

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