今野忠一

今野忠一：山岳と巨木を描いた重厚な日本画家

今野忠一（こんの ちゅういち、1915年3月26日 - 2006年4月15日）は、山形県天童市出身の日本画家であり、本名は今野忠市です。埼玉県に在住し、故郷の蔵王や月山をはじめとする山岳や、力強くそびえ立つ巨木を主な題材として、独自の画風を確立しました。

生涯と画業の歩み

今野は1931年に南画家の後藤松亭に入門し、松石という号を与えられました。その後、1934年に高嶋祥光を頼って上京し、児玉希望の門下生となり、欣泉と号して写実的な風景画を学びました。1940年には、新海竹蔵の紹介で郷倉千靱が主宰する草樹社に入塾し、忠一と号して花鳥画にも取り組みました。同年、第27回院展に「菜園」が初入選を果たし、その才能を開花させました。

戦後も精力的に院展へ出品し、数々の賞を受賞しました。1954年には「晩彩」、1956年には「残雪」、1959年には「吾妻早春」が奨励賞を受賞。さらに、1955年には「暮秋」で日本美術院賞、1957年には「樹と鷺」で同賞次賞、1958年には「老樹」で同次賞・文部大臣賞を受賞するなど、その実力が高く評価されました。1959年には院展の同人に推挙され、日本画家としての地位を確立しました。

1977年には「妙義」で内閣総理大臣賞を受賞。1978年から1988年まで、愛知県立芸術大学日本画科の主任教授を務め、後進の育成にも尽力しました。1988年には日本美術院の理事に就任。1992年から1996年まで、『中央公論』の表紙絵を担当するなど、多岐にわたる活動を展開しました。また、三島由紀夫の著書『金閣寺』の装丁も手掛けています。1992年には東北芸術工科大学芸術学部美術科の主任教授に就任。2001年には日本美術院の常務理事に就任しました。

作風の特徴

今野忠一の作品は、山岳や巨木を題材とした重厚な作風が特徴です。前景から背景まで絵の具を分厚く塗り重ねることで、独特の質感と量感を生み出しています。その画面からは、自然の力強さや生命力が感じられます。

作品の所蔵

今野忠一の作品の多くは、出生地である山形県天童市にある天童市美術館に収蔵されています。また、日本の現代作家としては唯一、イギリス・ロンドンの大英博物館に「早春の響き」が収蔵されており、国際的な評価も得ています。近年では、私家版の画集が大英博物館の図書館に収蔵されました。

今野忠一は、日本の自然を愛し、その美しさを独自の画風で表現し続けた日本画家です。彼の作品は、見る人に感動と安らぎを与え、世代を超えて愛され続けています。

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