仏足石

仏足石とは

仏足石（ぶっそくせき）とは、釈迦の足跡を石に刻み、信仰の対象としたものです。その起源は古く、紀元前4世紀に遡るとも考えられています。仏足石は、必ずしも釈迦の足跡のみを表すものではなく、シヴァ神の足跡も信仰の対象とされています。仏足石には、両足を揃えたものと片足のものがありますが、両足を揃えたものがより古い形式とされています。足跡には、実際の足跡ではなく、仏陀の身体的特徴を表す「三十二相八十種好」の説に基づいた模様が刻まれています。

仏足石の模様

仏足石には、以下のような特徴的な模様が見られます。

足下安平立相（そくげあんびょうりゅうそう）: 足が大きく平らで、土踏まずがないという特徴を表します。古い形式の仏足石には、模様がないこともあります。
足下二輪相（そくげにりんそう）: 足のほぼ中央に二重の輪が描かれ、そこから放射状の線が伸びています。
長指相（ちょうしそう）: 仏陀の足の指が長かったという説に基づき、足跡の指も長く描かれています。
手足指網相（しゅそくしまんそう）: 指と指の間に水かきのような網があったという説を表し、魚の絵で網を表すことが多いです。

これらの模様は、仏陀の優れた身体的特徴を象徴的に表しており、仏足石が単なる足跡の模倣ではなく、仏陀への信仰心を深めるためのものであったことを示しています。

古代インドにおける仏足石

古代インドでは、像を造る習慣がありませんでした。そのため、釈迦や仏陀を表現するために、仏足石や菩提樹などが用いられました。仏足石は、仏陀の存在を身近に感じさせるための重要な手段であり、信仰の対象として大切にされてきました。

日本における仏足石

日本には、奈良時代に唐を経て仏足石が伝わりました。特に有名なのは、奈良の薬師寺に所蔵されている仏足石（国宝）です。この仏足石には、753年（天平勝宝5年）に天武天皇の孫である智努王によって作られたことを示す銘が刻まれており、日本最古の仏足石とされています。

薬師寺には、仏足石の他に「仏足跡歌碑」も存在します。この碑には、仏を礼賛する21首の歌（「恭仏跡」17首・「呵責生死」4首）が刻まれています。これらの歌は、五・七・五・七・七・七の六句からなる独特の歌体で、この歌体による和歌は、この歌碑に刻まれたものがほとんどであることから「仏足石歌体」と呼ばれています。

薬師寺の仏足石は、長い間あまり知られていませんでしたが、江戸時代に出版された書籍に模写が掲載されたことから、広く知られるようになりました。その後、全国各地で模倣品が作られるようになり、現在では江戸時代から昭和初期に作られたものや、それ以降に作られたもの、また「インドで新たに採録した」という触れ込みのものなど、材質や大きさも様々な仏足石が存在しています。

まとめ

仏足石は、釈迦の足跡を象った石として、古くから信仰の対象とされてきました。仏足石には、仏陀の身体的特徴を表す様々な模様が刻まれ、仏足石歌という独自の歌体も生まれました。薬師寺の仏足石は、日本の仏足石の中でも特に有名で、その歴史と文化的な価値は非常に高いものです。

関連項目

三十二相八十種好
仏足石歌体

外部リンク

* ウィキメディア・コモンズには、仏足石に関するカテゴリがあります。

もう一度検索