付加価値税

付加価値税（VAT）の仕組みと世界各国での導入状況

付加価値税（VAT）または物品サービス税（GST）は、多くの国で導入されている間接消費税です。フランスで考案されたこの税制は、アメリカ以外のOECD加盟国で広く採用されており、日本の消費税もその一種です。VATは、売上税とは異なり、多段階課税である点が大きな特徴です。

売上税との比較

売上税では、最終消費者にのみ課税されますが、VATでは、生産から販売までの各段階で付加価値に対して課税されます。このため、消費者は最終的に同じ税負担を負いますが、各事業者は、仕入時に支払った税額を控除できます。

例：ある商品が1ドルの原材料費から、製造段階で20セントの利益、小売段階で30セントの利益を得て、最終的に1.5ドルで販売されるとします。

売上税（10％）：メーカーは1.2ドルを小売業者に卸し、小売業者は1.65ドル（1.5ドル×1.1）で販売し、15セントを納税します。
付加価値税（10％）：メーカーは1.1ドル（1ドル×1.1）で原材料を仕入れ、小売業者に1.32ドル（1.2ドル×1.1）で卸します。この際、メーカーは10セントの仕入税額控除を行い、2セントの税を納税します。小売業者は1.65ドルで販売し、3セント（15セント-12セント）を納税します。

このように、VATでは各段階で付加価値に対する税のみを納税するため、二重課税を回避できます。

仕入税額控除とインボイス

VATの仕入税額控除には、「請求書等保存方式」と「インボイス方式」があります。インボイス方式では、取引情報を記載したインボイス（請求書）の保存が必須で、仕入税額控除の前提条件となります。欧州では、電子インボイス（Electronic invoices）の利用が進んでいます。日本でも、輸出入における関税や、特定業界では電子インボイスが用いられています。

欧州連合型インボイス方式

EU型インボイスは、仕入税額控除の権利を有し、取引情報を一括して記載した書面または電子形式の請求書です。記載事項に不備があると、仕入税額控除が認められない場合があります。必須記載事項には、請求日、請求番号、売主・買主のVAT番号、商品名・数量・金額、税率、税額などが含まれます。EUでは、古くから国境を越える取引が盛んで、インボイスは商取引慣行として定着し、VATシステムと併せて活用されています。

軽減税率

軽減税率は、特定の品目（食料品など）に低い税率を適用する制度です。軽減税率の基準は国によって異なりますが、国内生産性や関連企業数などを考慮して設定される場合があります。しかし、OECDは、軽減税率は高所得者層に有利に働く可能性や、不正の機会を増やす可能性を指摘しています。

商品販売における方法と手順

商品販売におけるVATの処理は、請求書への税額票添付、または納品時の税額差額の前会計処理など、いくつかの方法があります。軽減税率の適用にあたっては、価格ラベルへのマーキングや軽減税率シールなどの表示方法が用いられています。

非課税品目

VATは原則としてほとんどの商品やサービスに課税されますが、少額品目などは非課税となる場合があります。その金額は国によって異なり、EUでは10ユーロ以下の輸入品はVATが免除されます。

各国の一般消費税率

世界152カ国以上でVATが導入されています。税率や課税品目は国によって大きく異なるため、単純比較はできません。アメリカでは、連邦政府によるVATは存在せず、州と地方自治体が独自に税率を決定します。

まとめ

VATは、多くの国で導入されている重要な税制です。その仕組みや各国での導入状況、軽減税率や非課税品目などを理解することで、国際取引や経済政策への理解を深めることができます。ただし、各国の制度は複雑で、詳細な内容はそれぞれの国の税法を参照する必要があります。

もう一度検索