付句

付句は、日本の伝統的な文学形式である連歌や連句（俳諧の連歌）において、前の句（前句）を受けて詠まれる句を指します。連歌や連句は複数人で句を詠み繋いでいく形式で、付句はその連鎖の中で重要な役割を果たします。

付句の構造と役割

付句は、前句の形式に応じてその形式を変えるのが特徴です。具体的には、前句が五・七・五の長句（ちょうく）であれば、付句は七・七の短句（たんく）で詠まれ、逆に前句が七・七の短句であれば、付句は五・七・五の長句で詠まれます。このように形式を変えることで、句の連なりに変化が生まれ、単調になることを避けるとともに、連鎖を豊かにしています。句を付け合う行為は「付合（つけあい）」と呼ばれ、連歌や連句において中心的な要素です。

連句における付句の概念

連句や長連歌（鎖連歌）においては、最初の句である「発句（ほっく）」を除き、すべての句が付句とみなされます。これは、発句以降の全ての句が、前の句を受けて作られるという付句の本質を捉えたものです。

さらに、連句においては、付句間の関係性に着目すると、より複雑な構造が見えてきます。ある句（たとえば句C）から見た場合、その直前の句（句B）が「前句」と呼ばれ、さらにその前の句（句A）は「打越（うちこし）」と呼ばれます。また、句Bを挟んで句Aと句Cが相対することも「打越」と呼ばれ、これらの関係性が連句の奥行きを生み出しています。

付句の作者と作成方法

付句は通常、前句の作者とは別の人が作るのが一般的です。しかし、「独吟（どくぎん）」と呼ばれる形式では、連歌や連句の全巻（一巻）を一人で作り上げることもあります。これは、作者の創造性を最大限に発揮する形式と言えるでしょう。

また、付句は通常、前句が提示された後に新たに作成されますが、以前に別の前句に付けた句を「再利用」して付句とすることも可能です。この手法は、句の多様性を維持しながら、過去の句に新たな意味を付与する効果があります。

付句の重要性

付句は、連歌や連句において、単なる言葉の連鎖以上の意味を持ちます。前句から受けたイメージや言葉の響きを基に、新しい視点や展開を生み出すことで、句の連なりに深みと広がりを与えます。付句は、連歌や連句において、作者の感性や表現力を試す場であり、参加者同士の創造的な交流を促す役割も果たしています。付句を通して、言葉の可能性や多様性を体感することができるでしょう。

付句は、連歌や連句という伝統的な形式において、その本質を成す重要な要素であり、日本文学の奥深さを理解する上で欠かせない概念と言えるでしょう。

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