代将 (イギリス海軍)

イギリス海軍の代将

イギリス海軍において代将（Commodore）は、海軍大佐より上、少将より下の階級であり、NATOランキングコードではOF-6に位置付けられています。これは、将官ではないものの、佐官の中で最も高い位置にある階級であり、他の軍種であるイギリス陸軍の准将やイギリス空軍の准将と比較されることもあります。

歴史的背景

代将の制度は、西洋の海軍史において重要な役割を果たしてきました。中世ヨーロッパにおいて、艦船で構成された艦隊の指揮を担う者にはアドミラル（Admiral）という称号が与えられており、彼らは総称して将官（Flag officer）として知られていました。やがて、将官の昇任が年功序列や定員により制限されるようになると、最先任の艦長がそのまま数隻の艦の指揮を執ることが一般的となりました。

代将制度はオランダ海軍によって最初に確立されたとされ、1688年の名誉革命ではウィリアム3世に従う将官の一人がイギリスで初めて代将となりました。また、1690年には海軍本部が最先任艦長に”コマドー”（Commadore）という称号を付与し、1732年に正式に”コモドー”（Commodore）として制度化されました。しかし、この時期の代将は正式な階級とは見なされておらず、その職務を終えれば自動的に艦長に戻されることもありました。

1748年までの間、代将として任に当たる艦長は陸軍の准将と同等とは認められず、少将への昇進にも代将を経由する必要はありませんでした。イギリス海軍内において代将は次第に2つのクラスに分かれ、ファーストクラスとセカンドクラスの代将が設けられることになります。ファーストクラスの代将は旗艦を持ち、艦隊を指揮する権限があり、俸給も少将に準じて支払われました。一方、セカンドクラスは自艦の艦長を務めながら艦隊を指揮する役割でした。

1783年にはファーストクラスの代将に少将と同じ制服の着用が許可され、その後1996年には代将が実質的な階級として認められました。

徽章と制服

代将（ファーストクラス）の制服は少将と同じ袖章を持ちながら、肩章には金モール地に王冠や星章、錨がデザインされています。セカンドクラスの代将も同様の正装エポーレットを着用しますが、星章の形状は異なります。現在では、代将の徽章は以前のセカンドクラスの物を用いる形で統一されています。

連邦諸国における代将の同等階級

イギリス連邦に属する国では、代将の階級が将官とみなされることがあります。この場合、袖の階級章には特殊なデザインが施され、肩章には金モール地に王冠または共和国の紋章、さらに交差する剣とバトンをフィーチャーしています。ただし、星章には当該国ごとに若干の相違が見られます。

参考文献

• - 小林幸雄 『図説イングランド海軍の歴史』 原書房、2007年。
• - Philip J Haythornthwaite; William Younghusband; Martin Windrow 『Nelson's navy』 Osprey、1993年。
• - 田所昌幸他 『ロイヤル・ネイヴィーとパクス・ブリタニカ』 有斐閣、2006年。

このように、代将はイギリス海軍の歴史において重要な役職であり、その制度、役割、制服の詳細は海軍の発展とともに変化してきました。

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