令和5年台風第2号

令和5年台風第2号（Mawar）の詳細

概要

2023年5月、グアム島南東で発生した台風2号は、発生後しばらく停滞し、その後西進しながら急速に発達しました。最盛期には中心気圧905hPa、最大風速60m/sという猛烈な勢力に達し、5月の台風としては過去2番目の勢力となりました。その後、フィリピン東方沖で進路を北寄りに変え、宮古島の東を通過した後、6月3日に温帯低気圧に変わりました。台風としての寿命は14日にも及び、統計開始以来11番目の長さとなりました。

この台風の影響で梅雨前線が活発化し、九州北部から東海地方にかけて記録的な大雨となりました。特に近畿・東海地方では平年より8日早い梅雨入りとなり、各地で甚大な被害が発生しました。また、フィリピンでは「ベティ（Betty）」と命名されました。

進路と状態の経過

台風発生から最盛期へ

5月17日、グアム南東で低圧部が発生し、19日には熱帯低気圧に発達しました。気象庁は、24時間以内に台風に発達する可能性を示唆しました。20日15時、カロリン諸島付近で台風2号が発生し、当初は北上する予報でした。その後、発達を続け21日には暴風域が発生、翌日には強い勢力になりました。22日から23日にかけて中心気圧が935hPaまで下がり、非常に強い勢力となりました。グアム島近海では太平洋高気圧の張り出しにより一時停滞しましたが、その後西に進み24日に通過しました。グアムでは最大瞬間風速76~83m/sを記録したとされています。台風はさらに発達し、26日に最盛期を迎えました。

台風の衰退と温帯低気圧化

27日には勢力が衰え始めましたが、強風域は広がり大型の台風となりました。29日には強い勢力まで弱まり、6月1日には暴風域が消滅しました。同日、政府は官邸に情報連絡室を設置し、災害対策会議を開催しました。気象庁は、高知、和歌山、奈良、三重、愛知、静岡県で線状降水帯が発生したと発表。これは連続して6県で線状降水帯が発生した初の事例です。和歌山県湯浅町では1時間降水量83.5mmを観測し、観測史上最高を更新しました。

その後、台風は速度を上げ、6月3日に伊豆諸島近海で温帯低気圧に変わりました。気象庁の事後解析では、最低気圧が900hPaに修正され、温帯低気圧化した時刻も6時間早まりました。

各地への被害

日本

災害救助法の適用

政府は、梅雨前線による大雨も含めた台風2号の被害に対し、茨城県取手市、埼玉県草加市、越谷市、松伏町、静岡県磐田市、和歌山県海南市に災害救助法を適用しました。

交通機関への影響

• - 鉄道: JR東海は東海道新幹線で運転を見合わせ、JR西日本は山陰線や姫新線など複数路線で運転を取りやめました。JR東日本も常磐線などで運行本数を大幅に減らし、特急列車に遅れや運休が発生しました。
• - 航空: 日本航空は117便の欠航を決定し、約9000人に影響が出ました。

中国・四国地方

高知県土佐清水市では24時間積算雨量が400mmを超え、幡多郡黒潮町では土佐くろしお鉄道中村線が土砂災害で脱線しました。

関西地方

和歌山県海南市では、河川の増水により緊急安全確保が発令され、国道が通行止めになりました。和歌山線や南海高野線は終日運休となり、和歌山線は復旧に9日間を要しました。また、真国川の氾濫により行方不明者も発生しました。奈良県でも浸水被害が相次ぎ、近鉄吉野線が運休、国道が通行止めになるなど、交通網にも大きな影響が出ました。

東海・甲信地方

三重県では県内初となる線状降水帯発生情報が発表され、国道が一時通行止めとなりました。愛知県豊橋市では河川の越水により緊急安全確保が発令され、市内では水没した車に乗っていた男性が心肺停止状態で発見されました。静岡県浜松市では土砂崩れが発生し、死者も確認されました。

関東地方

埼玉県では春日部市や越谷市で浸水被害が発生し、さいたま市では国道が通行止めとなりました。茨城県取手市では住宅街で床上床下浸水が多数発生、牛久沼が越水するなどの被害が出ました。また、鉾田市では巴川周辺で車が流され、県道で土砂崩れが発生しました。

グアム

グアムでは過去20年間で最も強い台風となり、一時外出禁止令が出されました。暴風により木が倒れ、建物の屋根が剥がれるなどの被害が発生しました。電線が切断されたことにより、島内の98%が停電し、大雨による浸水被害も多数報告されました。また、高波にさらわれて行方不明になったり、死亡する人も出ました。交通機関にも大きな影響が出て、グアムを発着する航空便が欠航や遅延に見舞われ、観光客の帰国にも影響が出ました。

各地の風速

6月1日には沖縄県竹富町大原で最大瞬間風速30.1m/s、与那国町所野で27.8m/s、石垣市盛山で25.7m/sを観測し、いずれも6月の観測史上最大となりました。

まとめ

台風2号は、記録的な勢力と広範囲に及ぶ影響をもたらし、各地に甚大な被害をもたらしました。特に梅雨前線を刺激したことによる大雨や線状降水帯の発生は、今後の防災対策において重要な教訓となるでしょう。

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