令集解

『令集解』は、日本の古代法令である養老令の注釈書です。貞観10年（868年）以前に編纂されたとされ、全50巻あったと推測されていますが、現在残されているのは35巻のみです。

この書物は、明法家・学者の惟宗直本によって私的に編纂されたものであり、『令義解』のような公式な法令注釈書とは異なり、法的効力は持ちません。しかしながら、その内容は日本の古代法制研究において極めて重要な史料となっています。

『令集解』の特徴として、まず令の本文を大きく表記し、次に小字で義解、令釈、跡記、穴記、古記といった様々な注釈を付している点が挙げられます。さらに、現在では失われた多くの令私記（讃記、額記、朱記など）も引用されており、特に大宝令の注釈である古記は、大宝令の復元に欠かせない貴重な情報源となっています。

ただし、『令集解』には欠損部分もあります。例えば、倉庫令や医疾令は現存していません。また、内容としては、養老令だけでなく、散逸した日本律、『律集解』、唐令をはじめとする様々な中国令、令の注釈書、中国の格（中にはトルファン出土文書と一致するものもある）、式、その他の法制書・政書、史書、経書、緯書、字書、辞書、類書、雑書、日本の格や式、例などの施行細則などが幅広く引用されています。

現存する35巻のうち、官位令、考課令第三、公式令第五の3巻は、本来の『令集解』の一部ではなく、後に欠損部分を補うために付け加えられた令私記であると考えられています。

『令集解』は、古代日本の法制や社会を知る上で貴重な資料であり、多くの研究者によって詳細な分析が続けられています。その編纂には、当時入手可能なあらゆる法典や文献が活用されており、古代日本の法体系のみならず、当時の文化や思想、外交などについても理解を深める上で重要な手がかりを提供しています。

この書物の多様な引用文献は、古代日本の学問的交流や情報伝達の状況を示すものでもあり、研究対象としては、法制史の枠を超えて、歴史学、文献学、東洋史など多様な分野にわたる広範な知見が求められます。特に、大宝令の注釈である古記の存在は、古代法令体系の変遷を辿る上で極めて重要であり、その研究は『令集解』研究の中核を成すと言えます。

現在では、『令集解』は様々な形で刊行されており、デジタルアーカイブへのアクセスも容易になっています。これにより、研究者のみならず、広く一般の人々もこの貴重な史料に触れる機会が増え、古代日本の歴史や文化への理解を深めることが期待されています。様々な研究成果やデータベースの整備により、『令集解』に関する研究はますます進展し、古代日本の歴史解明に大きく貢献するものと期待されます。

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