仮面舞踏会 (横溝正史)

仮面舞踏会

『仮面舞踏会』は、日本の推理作家横溝正史による長編小説で、金田一耕助シリーズに属する作品です。この物語は軽井沢を舞台に、さまざまな人物が絡み合う複雑な事件が展開されます。

概要

本作は1962年7月号から雑誌『宝石』で連載を開始しましたが、横溝正史の体調不良により1963年に一時中断。長い改稿を経て1974年に書き下ろしとして出版されました。角川文庫版には「江戸川乱歩に捧ぐ」との言葉が添えられています。この年、横溝は60歳を迎え、乱歩からの励ましを受けたことも彼の執筆意欲を刺激したとされています。

本作は昭和35年、すなわち1960年を舞台としており、他の長編作品と比べて新しい時代背景が印象的です。登場人物には旧華族や芸能人、音楽家などが名を連ねており、怪奇要素が少なく、むしろ人間ドラマとしての側面が強調されています。作者自身もこの作品を、自己選のベスト10中、7位に推挙しており、兄である西田政治からの評価が影響したと述べています。

2021年には、作者の遺族より本作の草稿が二松学舎大学に寄贈され、新たな資料として注目を浴びました。この草稿には連載や単行本とは異なる登場人物の描写も含まれており、2022年には岡山市にある吉備路文学館で特別展が開催され、一般に公開されました。

ストーリー

物語は、1959年8月16日に金田一耕助が軽井沢で心中未遂の男女を発見するところから始まります。その後すぐ、元子爵で映画スターの笛小路泰久がプールで死亡しているのが発見されます。初めは酔っぱらいによる事故とされますが、前年に死亡した俳優阿久津謙三との関連が疑われ、映画女優の鳳千代子が捜査の中心に浮かび上がります。

千代子は複雑な結婚歴を持つ女優で、彼女の周りには過去の結婚相手が次々と登場し、波乱の展開を見せます。1960年8月14日には、恋人の飛鳥忠熈の依頼で金田一が再び調査を開始し、槇恭吾という画家が謎の死を遂げます。この事件は、彷徨う色盲の暗示や心理的な駆け引きが絡むサスペンスに繋がり、金田一と地元警察が協力して真相を探ります。

捜査の進展と共に、作品は様々な人間関係と過去の因縁を掘り下げていきます。美沙と呼ばれる千代子の娘を巡る苦悩も浮き彫りになり、家族にまつわる血縁や戦争の影が影響を及ぼします。最終的には、複雑な人間関係と裏切りが絡み合った中で、金田一は真実に迫ることができるのでしょうか。

登場人物

この小説には多彩なキャラクターが登場します。私立探偵の金田一耕助はもちろん、警察の捜査官、映画女優、実業家、そして様々な関係者たちが絡み合い、それぞれの心理や動機が事件にどう影響を与えるのかが描かれています。特に鳳千代子とその家族の過去は、物語全体に重層的な深みを与えます。

包括的に見れば『仮面舞踏会』は、単なるミステリー小説を超え、戦後の日本社会が抱える様々なテーマを反映した作品と言えます。

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