仲良し同盟

トムとジェリー短編アニメ『仲良し同盟』：平和条約の行方

1948年7月17日に公開された『仲良し同盟』(原題:The Truce Hurts)は、人気アニメシリーズ『トムとジェリー』の短編作品の一つです。本作では、トムとジェリーに加え、彼らの宿敵であるブルドッグのスパイク(本作ではブッチと呼ばれています)が登場し、三者間の壮絶な争いと、その後の意外な展開が描かれています。

始まりは壮絶な喧嘩

物語は、いつものようにトムとジェリー、そしてスパイクが激しい争いを繰り広げるシーンから始まります。しかし、ある時、スパイクはトムとジェリーに問いかけます。「こんな争いに何の意味があるんだ？仲良くやっていこうぜ！」。この提案を受け、三者は休戦協定を結び、仲直りを誓い合うのです。スパイクが作成した証書に署名し、誓いの握手を交わした三者は、同じ屋根の下で生活を共にすることになります。

予想外の平和な日々

休戦協定後、三者の関係は劇的に変化します。スパイクは朝食の準備をし、トムはジェリーの歯磨きを手伝うなど、互いに協力し合い、助け合う姿が見られます。それぞれの体の大きさに合わせたミルクの量を満喫したり、ゴミを漁っていたブッチをジェリーが食べられそうになった際にはトムが助けに現れ、逆にトムが飼い犬に襲われた際にはスパイクが駆けつけ犬を撃退するなど、三者はまるで家族のように仲睦まじく暮らします。この平和な光景に、ブッチでさえも驚きを隠せない様子が描かれています。

ステーキ騒動と平和条約の破棄

しかし、この平和な日々は長くは続きませんでした。ある日、散歩に出かけた三者の前に、大きなビーフステーキが現れます。肉屋のトラックから落ちたステーキを前に、三者は大喜びしますが、ステーキの分け方を巡って再び争いが勃発します。もみくちゃになるうちに、ステーキはドブに落ちてしまい、三者はステーキを食べ損ねてしまいます。

ステーキを巡る争いをきっかけに、三者の仲は再び険悪なものとなります。スパイクは仲直りの証書を破り捨て、トムとジェリーは元通り激しい喧嘩を始めるのです。休戦協定はあっけなく破棄され、物語は三者のいつもの争いへと回帰していくのです。

各キャラクターの描写

トム: ジェリーの歯磨きを手伝ったり、ブッチからジェリーを助けたりと、休戦中はジェリーに対して思いやりのある行動を見せていました。しかし、ステーキの分配でスパイクから骨だけを与えられたことに怒りを感じ、反撃した結果、スパイクから仕返しを受けます。そして、ジェリーが持ち逃げしようとしたステーキを取り合おうとした結果、ステーキを食べ損ね、再び喧嘩を始めます。

ジェリー: ブッチに襲われそうになったところをトムに助けられましたが、ステーキの分配では小さい分しか貰えず、持ち逃げしようとします。しかし、これも失敗し、結局ステーキを食べ損ね、再び喧嘩に発展します。

スパイク: 喧嘩を仲裁し、休戦協定を提案し、証書を作成します。朝食の準備をしたり、犬に襲われたトムを助けたりと、休戦中は積極的に仲を取り持とうとしますが、ステーキの分配で独り占めしようと試み、トムたちと取り合いになり、結局ステーキを食べ損ねます。そして、仲良し同盟の契約書を破り、再びトムたちと喧嘩を始めます。

ブッチ: ゴミを漁っていたところジェリーを見つけ、食べようとするもトムに殴られます。その後、トムがジェリーに優しく接するのを目の当たりにし、現実味が感じられない様子を見せています。

飼い犬: ある家の飼い犬で、骨をかじっていたところトムを目撃し、トムを食べようとしますが、スパイクに殴られ、歯が抜けてしまいます。

作品に関する補足情報

この作品には、トム、ジェリー、スパイクが泥だらけになるシーンが含まれていましたが、人種差別的な問題からDVD版ではカットされています。また、1955年には再公開され、タイトルカードやエンドクレジットなどが変更されていますが、作品内容はほぼそのまま残されています。現在、テレビで放送されているのは、多くの場合、再公開版です。

『仲良し同盟』は、トムとジェリー、そしてスパイクの三者間の複雑な関係性をユーモラスに描いた作品です。短い時間の中で、激しい喧嘩から一時的な平和、そして再び喧嘩へと展開する様子は、視聴者に深い印象を与えます。また、この作品が抱える歴史的な背景を知ることも、作品をより深く理解する上で重要です。

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