仲間事

仲間事（なかまごと）についての詳細

仲間事とは、江戸時代の日本における訴訟制度の中で、訴権が否定される特定のケースを指す言葉です。この制度は、司法の運営において非常に特色あるものであり、江戸時代における社会関係や商業取引の背景を理解する上で重要な概念です。

江戸時代の訴訟制度の枠組み

江戸時代の訴訟制度は、大きく分けると吟味筋（刑事訴訟）と出入筋（民事訴訟）の2つのカテゴリーに分類されます。出入筋においては、さらに本公事と金公事、そして仲間事という細分化が行われます。具体的に言えば、本公事は土地や身分に関する訴え、金公事は利息を含む金銭取引に関する訴えを扱います。この中で仲間事は、特に仲間同士の信頼関係に依存した契約や取引を扱うもので、訴権を求めることができません。

仲間事の具体例とその背景

仲間事に含まれる案件は、主に以下の3つのカテゴリーに分けられます。大名や商人、または個人の間での信頼に基づく契約です。
1. 連番証文有之諸請負徳用割合請負 - 共同出資に関連した利益配分の問題。
2. 芝居木戸銭 - 興行による出資や利益分配に関する問題。
3. 無尽金 - 頼母子講に関連する交易や利益分配の問題。

さらに天保14年（1843年）以降には、遊女や芸者に関する揚代金が新たに追加されました。

これらの取引は、相手方との信頼関係の上に成立するため、問題が生じた場合でも、当事者間で解決すべきだという考えがありました。こうした取り決めは、江戸時代の幕藩体制において不道徳や反社会的と見なされることもあり、公式な権力が介入して解決することは少なく、内部のトラブルとして無視されがちでした。

法的枠組みと相対済令

仲間事は、その特性から訴権を否定される形で扱われることとなり、一般的な利潤追求の金公事と同じ枠組みで考えられることもありました。相対済令という制度が導入され、より一般的な商取引における問題解決方法が示されるようになりますが、仲間事に関しては、それらに従うことはなかったため、訴権や債権、債務者の返済義務そのものを否定するものではないことが特徴です。

参考文献

・神保文夫「仲間事」『日本史大事典 5』（平凡社、1993年）
・本間修平『日本法制史』（中央大学通信教育部、2010年）

仲間事は、江戸時代の訴訟制度がどのように構築され、運営されていたのかを知るために欠かせない要素となっています。その考え方や仕組みは、現代の法律制度とは大きく異なるだけに、興味深い文化的背景を提供してくれます。

もう一度検索