任務完了演説

任務完了演説

任務完了演説（にんむかんりょうえんぜつ）は、2003年5月1日、アメリカ合衆国のジョージ・W・ブッシュ大統領によって行われた、イラク戦争の主要な戦闘作戦が終了したことを示す演説です。この演説は、カリフォルニア州のサンディエゴ近くの海上にある空母エイブラハム・リンカーンの甲板で行われ、テレビで生中継されました。

ブッシュ大統領は、「Mission Accomplished」と書かれた横断幕を背に演説を行い、この言葉がこの演説の象徴となりました。演説の冒頭で彼は「イラクでの大規模な戦闘作戦は終結した」と明言し、この戦闘の終了をアメリカ同時多発テロ事件に始まる対テロ戦争の一環として位置づけました。彼の発言は、米国による事実上の戦勝宣言と受け取られました。

演説が行われた空母エイブラハム・リンカーンは、イラク戦争に参加した艦船の一つで、当時帰還兵を載せて帰港の途上にありました。ブッシュは、海軍の機体であるS-3B Vikingに搭乗した際、彼自身も一時操縦を行い、騒々しい拍手の中で到着しました。その場には、カメラマンや記者も数十人ほど集まっており、ブッシュの登場は一種のショーとなりました。

この演説には議論も伴いました。この「完了」というメッセージは、実際にはその後も続く戦闘や作戦、そして死者の増加に対しての現実とは乖離していたからです。演説の後、イラクでの米軍作戦は数年にわたり続き、多くのアメリカ軍関係者が犠牲となりました。このことから、多くの人々がたちまち「完了」の宣言が現実を反映していないと指摘し、ブッシュ大統領の評価は議論の的となりました。

特に、2004年の大統領選挙に候補として出馬したジョン・フォーブズ・ケリーは、ブッシュの演説を非常に問題視しました。さらに、演説中に映し出された「Mission Accomplished」の横断幕が意図的に用意されたとの疑惑も持たれました。これについては、ブッシュ政権の報道官であったスコット・マクレランが、横断幕の掲示は海軍によるもので、ブッシュ政権の指示ではないと否定しました。

2008年には、ブッシュ自身がこの横断幕について、乗組員向けのメッセージであり、彼が戦争が終了したと認識していたわけではないと説明しました。彼の政権は、メディアを通じての情報伝達に特にこだわりを持っており、その細部への配慮がこの演説にも表れていたとされています。さらに、ブッシュの演説はアメリカ国民にとって、戦争の結果をどう受け止めるかという難題を残しました。施策の背後にあった複雑な政治的文脈は、今なお議論の余地を残しています。

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