伊佐沢の久保ザクラ

伊佐沢の久保ザクラ

伊佐沢の久保ザクラは、山形県長井市に位置する樹齢約1200年のエドヒガン桜の古木です。この樹木は国の天然記念物に指定されており、地域の象徴的存在となっています。樹高は13.85メートル、根周りは10.8メートル、幹周りは8.1メートルにも達し、その壮大な姿は訪れる人々の目を引きます。

由来と歴史

久保ザクラの伝承によると、830年（延暦11年）に征夷大将軍坂上田村麻呂が蝦夷征討の軍に従い、当地に訪れた際、豪族久保氏の美しい娘お玉が彼に仕えていました。将軍が去った後、お玉は将軍への思いを抱きつつ亡くなり、この悲しみを癒すために、坂上田村麻呂が一株の桜をお玉の墓に手植えしたと伝えられています。このため、久保ザクラは「お玉桜」としても知られています。

また、桜の由来にはいくつかの異なる説が存在し、地元の豪族が妻や娘の死を悼んで桜を植えたとも言われています。

樹形の変化

歴史的には、幕末の頃に乞食が桜の根元のほこらで炊事を行った際、火災が発生し木の一部が焼失しました。この事故によって、二本の大枝や他の多数の枝が枯れ果て、樹形は大きく変化しました。それ以来、地元の人々は残った枝を支えるために支柱を設置し、保護活動を続けてきました。今でも60本以上の支柱が久保ザクラを支えています。

樹勢回復作業

2006年に行われた樹勢回復作業は、久保ザクラの健康を守るための重要なプロジェクトです。桜の上部が重くなり、老朽化した幹に亀裂が生じてしまいました。このままでは幹や枝の耐久性が危ぶまれることから、文化庁の承認を得て、外科的手術が必要とされました。目指しているのは、見た目が二本の木のように見える久保桜に新たな根を発生させ、その根を地面にまで伸ばし、将来的には古木としての美しさを取り戻すことです。この計画には5～10年の期間が見込まれています。

桜は古木になると中心部が空洞化することが一般的ですが、久保桜は火災によって内部が炭化しているため、自然な根の発生が難しい状況です。樹勢回復には、ピートモスと木炭を混ぜ合わせた特別な材料が使用されています。2010年には、ヒゲ根状の新しい根が確認され、太さ3センチのものが地面にまで達しているとの報告もあります。

まとめ

伊佐沢の久保ザクラは、単なる桜の木ではなく、地域の歴史や文化を語る貴重な存在です。毎年4月下旬には薄紅色の花を咲かせる姿は、訪れた人々の心を温かくし、長井市の誇りとして多くの人に親しまれています。今後も地域の人々によって保護され、次世代へと受け継がれていくことでしょう。

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