伊東順二

伊東順二氏（1953年生まれ）は、日本の美術界において、評論家、プロジェクトプランナー、そしてアートプロデューサーとして卓越した存在感を示す人物です。東京藝術大学社会連携センター・COI拠点特任教授、富山市ガラス美術館名誉館長、元長崎県美術館館長、株式会社JEXT顧問など、数々の要職を歴任してきた経歴が、その多様な活動範囲と影響力の大きさを物語っています。

氏のキャリアは、早稲田大学大学院文学研究科仏文学専攻修士課程修了後、フランス政府給費留学生としてパリ大学やエコールド・ルーブルでの研鑽から始まります。1983年の帰国までの間は、フィレンツェ市庁美術展部門嘱託委員や「フランス現代芸術祭」副コミッショナーなどを務め、フランスを拠点に活躍。この時代には、『芸術新潮』での連載を通して「ニューペインティング」を日本に紹介するなど、日本の現代美術界に大きな影響を与えました。

帰国後は、美術評論家としての執筆活動に加え、アートプロデューサー、プロジェクトプランナーとして活動を本格化させます。1989年には株式会社JEXTを設立。展覧会の企画監修からアートフェスティバルのプロデュース、アートコンペティションの企画実施、都市計画、そして企業や政府機関への文化事業コンサルティングまで、その活動領域は多岐に渡ります。

伊東氏の活動は、美術の領域にとどまりません。数多くの財団や美術館の理事・顧問、評議員などを歴任し、美術、ファッション、文化、教育、政府機関、地方自治体など、多様な分野にまたがる活動を通して、日本の文化芸術の発展に貢献してきました。

具体的には、ニューヨークのOMI展委員会、セゾン現代美術館評議委員、パリ日本文化会館運営審議委員、岩崎美術館評議員、長崎ミュージアム振興財団理事、日本ファッション協会顕彰制度委員、国際茶道文化協会理事、稲盛財団京都賞専門委員会委員など、多数の機関に関わっています。また、多摩美術大学講師、ICSカレッジオブアーツプロデューサー、富山大学教授、東京藝術大学非常勤講師、そして東京藝術大学アートイノベーションセンター副センター長などを務め、教育分野でも大きな貢献を果たしています。

さらに、国土庁、通産省、建設省、総理府といった政府機関や、様々な地方自治体における委員、アドバイザーとしての活動も精力的に行っています。

伊東氏の活動におけるもう一つの大きな柱は、展覧会やコンペティションなどの企画・プロデュースです。ジャン＝ミシェル・オトニエル展、宮廻正明国際巡回展、草間彌生展、北斎展、フェルメール展など、数々の著名な展覧会のプロデュースやキュレーションを手掛けてきました。その他、スターバックス大宰府天満宮参道店プロデュース、多くのアートコンペティションの審査員を務めるなど、その活動は多岐にわたります。

これに加え、数多くの書籍の執筆、編集、監修にも携わっており、その著作は現代美術、デザイン、茶道文化など、多様な分野を網羅しています。代表的な著書には、『現在美術』（パルコ出版）、『あさってライト』（パルコ出版）、『モダンアートの終焉』（東京書籍）などがあります。

伊東順二氏は、単なる美術評論家やプロデューサーの枠を超え、文化芸術を推進する多面的な役割を担う、日本を代表する文化人と言えます。その活動は、日本の文化芸術の国際的な認知度向上に大きく貢献していると言えるでしょう。2002年にはフランス政府より文化芸術勲章（シュバリエ）を受章するなど、その功績は高く評価されています。

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