伊藤孝司

伊藤孝司（いとう たかし）は、1952年2月4日に長野県で生まれた日本の写真家、ジャーナリストです。愛知大学法経学部を中途退学し、平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞や中日写真展文部大臣奨励賞など、その活動は高く評価されています。

フォトジャーナリストとして、伊藤氏は一貫して「アジアの民衆の視点から日本の過去と現在を捉える」ことを追求してきました。主なテーマは、アジア太平洋戦争における日本の加害行為と、それによって生じた被害者たちの現実です。被爆者でありながら日本社会で顧みられなかった在日コリアンの問題や、元「従軍慰安婦」たちの証言などを、写真と文章で丹念に記録し続けています。

また、日本が関与するアジア各地での環境破壊問題も重要な取材対象です。日本の経済活動がアジアの自然や人々の生活に与える負の影響、例えば河川開発や原子力発電関連、ウラン採掘などを現地から報告しています。

さらに、日本と韓国、そして日本と朝鮮民主主義人民共和国との関係性についても、長年にわたり精力的に取材を行っています。特に北朝鮮へは幾度も渡航し、国内の日常、歴史問題、経済状況、そして日本との間に横たわる様々な問題について、独自取材を通してその実態を日本社会に伝えようと試みています。

これらの取材に基づき、数多くの著作や映像作品を発表しています。

主な著作（単著・編著）

『写真記録原爆棄民 韓国・朝鮮人被爆者の証言』 (1987)
『写真記録樺太棄民 残された韓国・朝鮮人の証言』 (1991)
『<証言>従軍慰安婦・女子勤労挺身隊 強制連行された朝鮮人女性たち』編著 (1992)
『破られた沈黙 アジアの「従軍慰安婦」たち 写真記録』編著 (1993)
『棄てられた皇軍 朝鮮・台湾の軍人・軍属たち』 (1995)
『日本人花嫁の戦後 韓国・慶州ナザレ園からの証言』 (1995)
『アジアの戦争被害者たち 証言・日本の侵略』 (1997)
『台湾への原発輸出』 (2000)
『日本が破壊する世界遺産 日本の原発とオーストラリア・ウラン採掘』 (2000)
『平壌からの告発 日本軍「慰安婦」・強制連行被害者の叫び』 (2001)
『平壌からの告発 続』 (2002)
『地球を殺すな! 環境破壊大国・日本』 (2004)
『ヒロシマ・ピョンヤン 棄てられた被爆者』 (2010)
『無窮花(ムグンファ)の哀しみ 〈証言〉〈性奴隷〉にされた韓国・朝鮮人女性たち』 (2014)
『朝鮮民主主義人民共和国－米国との対決と核・ミサイル開発の理由』 (2018)
『朝鮮で見た〈日本〉－知られざる隣国との絆』 (2019)

※その他、共著や写真集も多数。

監督作品（ドキュメンタリー映画）

『長良川を救え！』(1999)、『アリラン峠を越えて』(2003)、『銀のスッカラ』(2006)、『ヒロシマ・ピョンヤン 棄てられた被爆者』(2009) など。

企画・取材を担当した主なテレビ番組

環境問題（長良川、長江三峡ダム、原発輸出、世界遺産、森林破壊など）、北朝鮮に関する継続的なルポ（国内情勢、歴史問題、経済、日本との関係など）、日韓交流、国際協力（地雷除去）など、多岐にわたるテーマで数多くの番組を手がけています。

伊藤孝司氏は、写真とジャーナリズムの手法を用い、アジアの視点から日本の歴史的・社会的な問題を深く掘り下げ、その実態を伝える活動を続けています。

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